蛇紋岩由来の暗赤色土の性質,生成並びに分類に関する研究 第3報

遊離酸化物,粒径組成,風度化及び粘土鉱物組成について

森田佳行,田中永晴

   要旨

 林野土壌分類では土壌群として暗赤色土が設定されている。この土壌群には亜群として 塩基系暗赤色土,非塩基系暗赤色土及び火山系暗赤色土が設定されているが,おのおのの生成条件や生成作用は十分に解明さ れていない。筆者らは超塩基性岩である蛇紋岩由来の暗赤色土の性質,生成条件を調ベ,分類学的位置づけを明確にするため の研究を進めている。第1報において蛇紋岩由来の暗赤色土とその周辺に分布する赤色土について,それぞれの断面形態,一 般化学的性質及び無機化学組成を比較検討した。また,暗色を呈する原因についても検討を加えた。本報では第1報と同じ土 壌断面試料を用い,粒径組成,粘土鉱物の組成及び遊離酸化物を調べ,粘土の機械的移動,風化度指標等を比較し,土壌の生 成過程,生成の方向,進行の程度を検討した。得られた結果は次のとおりである。@暗赤色土は粘土含有量が多く,下層ほど 著しかった。また,Mehra-Jackson法で抽出された鉄及びクロム含有量が多かった。A暗赤色土と安定面の赤色土の表層は細 粘土含有量が少なく,下部に多い層があり,粘土が機械的に移動する傾向が認められた。細粘土の断面内分布傾向とMehra- Jackson法で抽出される鉄,アルミニウム,クロームの断面内分布の傾向はかなり類似していた。これらの遊離酸化物も断面 内で細粘土と同じ動きをするものと考えられた。B暗赤色土は風化が進んでおり,風化度はほぼ赤色土の範囲であるが,赤色 土よりはやや低い傾向が認められ,このことは母岩に塩基含有量が多いために風化が遅れているものと推測された。緑色片岩 由来の赤色土は暗赤色土と同様の傾向を示した。C暗赤色土はクロライトを含み,1:1型粘土鉱物含有量が少ない点で赤色土 とは区分された。これは母岩である蛇紋岩の塩基含有量が多いためと推定された。以上の結果より,暗赤色土は赤色土と同様 に更新世の高温な気候下で生成された土壌で,その生成には母岩が超塩基性であるという特性が強く影響していると予想され た。

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−森林総合研究所研究報告−
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