高野 勉,木下敍幸
単板品質の向上を目指して,加熱処理したアカマツ材 を用いたロータリー単板切削試験を行い,加熱条件(50,70,90℃の温・熱水に浸漬)及 び刃口水平方向間隔の条件(90,95,100%)による単板品質の変化を明らかにした。単 板品質として面あらさ,裏割れ深さ,裏割れ間隔を測定し,木口面において単板表面と年 輪とのなす角(年輪傾斜角)との関連で単板品質の変化を調べた。その結果,加熱処理に よって逆目ぼれは抑制されたが.年輪傾斜角の小さい部分で早材部の剥離や年輪界におけ る割れが生じやすくなり,面は粗くなった。特に70℃及び90℃の条件ではこの現象が逆目 部分で著しく,極端な場合には剥離によって刃詰まりが起き,連続した切削が不可能とな った。これらの剥離や割れの発生原因について,熱による木材成分の物性変化及び木材の 組織構造の面から考察した。また,70℃及び90℃の条件では単板面の毛羽立ちや材の変色 も観察できた。裏割れは,加熱処理によって深さと間隔が大きく減少したが,70℃処理と 90℃処理との差は小さかった。加熱処理を行わない場合には,裏割れ深さは順目部分に比 べて逆目部分で深く,また,刃口水平方向間隔を狭くすると裏割れが晩材部で止まること が多かったが,加熱処理条件下ではこれらの差異は小さく,一様に浅くなっていた。
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−森林総合研究所研究報告−
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