豊岡 洪,石塚森吉,大澤 晃,九島宏道,金澤洋一,佐藤 明
大雪山麓層雲峡地区を中心とする石狩川源流地域の 亜寒帯性針葉樹林が,1954年9月の大風害によって壊滅的披害を受けた。その風倒跡地に おいて,風倒後の森林植生の動態を明らかにするとともに,森林施業に対する指針を得る 目的で,風倒直後の1957年から植生遷移の調査を継続している。風倒後34年日までの調査 結果から次のことが明らかになった。風倒前の調査地には針葉樹純林が成立していた。こ の針葉樹林は全体としてはエゾマツが,急斜地にはアカエゾマツが上層林冠を構成し,中 下層にトドマツを伴う林相を示していたが,風倒によって壊滅した。風倒後の森林成立に は,カンバ類,ヤナギ類,ケヤマハンノキなどの陽性落葉広葉樹が先駆的役割を果たした が,これら樹種の更新の成否については林床植生が発達するまでの風倒後6〜8年までが決 定的な意味をもった。後継の針葉樹類は,いずれも風倒前から更新していた前生稚幼樹が 成長したもので,針葉樹林成立の鍵は風倒前の更新状態にある。風倒34年後の林分組成は, 南面傾斜地では林冠の上層にカンバ類を配置し,中下層にトドマツを伴う被層林に推移し ているが,北面傾斜地では広葉樹類の更新が少なく,トドマツを主としてアカエゾマツが 点在する針葉樹林へと推移している。平坦地ではカンバ類,ヤナギ類を上層に配置し,中 下層にわずかにエゾマツ,トドマツを伴う森林へと推移している。林床植生は風倒直後で はエゾイチゴ優占の群落に変化したが,風倒6〜8年後を境にしてエゾイチゴは衰退し,そ の後岩石地ではイワノガリヤスが優占を続けた。岩石地以外の傾斜地ではイワノガリヤス の優占を経て,クマイザサ優占のササ型植生に変化した。平坦地ではエゾイチゴ優占から 直接クマイザサ優占のササ型植生に変化したが,このササ型の林床型のところは,後継の 針葉樹稚幼樹は少なく,後生の広葉樹類の更新も不良のため疎林状を呈している。
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−森林総合研究所研究報告−
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