汚泥堆肥類の施用に伴う土壌生物の変化とその影響

新島渓子,藤田桂治,小川 真

   要旨

 この研究は堆肥化した下水汚泥を苗畑に施用した場合の土壌動物と高等菌類に与える影響を 明らかにするとともに,これら土壌生物の変化と,幼齢木の成長や土壌の理学性とのかかわりを明らかにするために行ったもので ある。調査は千代田試験地(茨城県新治郡千代田町)の苗畑で行い,5m井×5mの区画を48個設定し,天童汚泥堆肥(高分子系凝集 剤,ノコクズ入り),日立汚泥堆肥(高分子系凝集剤,粉砕樹皮入り),山形汚泥堆肥(石灰系凝集剤,ノコクズ入り),落葉堆 肥及び牛糞厩肥を0,2.5,5,10及び20s/m施用した。各処理区ごとにクヌギ,クロマツ,ヒ ノキの3年生苗木を25本ずつ植栽した。土壌動物は単位時間(20分)拾い取り法で調査し,高等菌類は子実体が発生した時点で種 類を記録した。調査の結果,天童汚泥堆肥施用区で根を食害するコガネムシ幼虫の湿重量が1〜2年目に増加したが,3年目には影 響が見られなくなった。その他の堆肥類の施用が土壌動物に与える影響及ぴ耐水性団粒状構造と土壌動物の関係は明らかでなかっ た。クヌギ植栽地の汚泥堆肥施用区では菌根菌のタマネギモドキが2〜4年目に発生し,2年目の発生量は施用量に比例して多かった が,3年目には処理区間の差が明らかでなくなった。汚泥堆肥によるクロマツ及ぴヒノキの肥効は明らかでなかった。クヌギヘの効 果2年目に現れ,樹高,根元径ともに施用量が多いほど成長も良い傾向が見られたが,3年目には施用量と肥効の関係が明らかでな くなった。4年目以後には,処理区別のクヌギの樹高に差が見られなくなった。

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−森林総合研究所研究報告−
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