落合幸仁, MOHAMMAD Alimanar, RAHMAN Yusop Abd.
伐採により有用樹が減少し,劣化した二次林の質的な向上を目指すため,フタバガキ科 リュウノウジュ(Dryobalanops)属の2樹種の天然分布と様々な二次林内の伐開地に植栽された両樹種の植栽後3年間 の成長を報告する。
両樹種のうち,D.aromaticaは,斜面上部の比較的広くて平坦な尾根上に天然分布していた。 一方,D.lanceolataは,斜面中部の急斜面上に天然分布していた。つまり,前者は後者に比べて,より土壌の乾きや すいところに天然分布している。
この両樹種のうち,D.aromaticaを,熱帯地方で広く行われているラインプランティングをまねた線状の伐開地に植 栽した。線状の伐採地の幅が広いほどD.aromaticaの生存率は低かった。しかし,樹高や直径などの増加量は幅が広いほ ど大きかった。このように,この樹種が早く成長するためには樹冠を大きく開ける必要があった。また,斜面上部,中部に植 栽された稚樹は下部に植栽された稚樹より成長がよかった。
次に,天然分布の異なる両樹種を,それぞれの樹種が天然分布している地形に似ている斜面上部と中部に伐開した大きさ20m ×20mと10m×10mの人工的なギャップ内に植栽した。これをギャップブランティングとした。生存率は,両樹種ともギャップが 大きいほど低くなっている。しかし,大きいギャップは多少生存率が低くなるものの成長は早かった。大きいギャップ内では, 光が多くあたり,また,土壌も湿っていることが分かった。このような大きいギャップ内の微気象の優位性が,大きいギャッ プ内に植栽された椎樹の成長を促進するものと思われた。また,斜面上の位置の違いによって,大きく成長の傾向が違ってい た。より乾いた尾根筋に天然分布するD.aromaticaは,斜面上部と中部の樹高成長に大きな差は出なかったが,D. lanceolataは斜面中部の大きいギャップ内でのみ大きな樹高成長量を示した。このように両樹種には,それぞれの樹種の 特性に応じた植栽適地があった。
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−森林総合研究所研究報告−
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