基太村洋子
木材表面と立木の染色は古くから試みられていたが,木材 染色に関する基礎的研究と木材内部の染色についての報告は,極めて少ない。
本報は,次の事項について研究した報告である。1. 木材構成成分の染色性については,木材 の三大化学成分と木粉への各種染料の染着量を測定して染色性を調べた。その結果,各構成成分 の染色性は,染料の種類によりそれぞれ異なることを明らかにした。リグニンは直接染料で染色 されにくかったが,酸性染料,塩基性染料で染色できた。セルロース,ヘミセルロースは直接染 料で染色されたが,酸性染料では全く染色されなかった。しかし,セルロースにトリメチルアン モニウム基を導入すると,酸性染料による染色性は著しく改善された。2. 木材構成組織の染色 性についてみると,ウダイカンバの構成組織の染色性はそれぞれに特長をもち,それらが木材の 質感の強調につながった。なお,木材及び各構成成分の染色性に及ぼす抽出成分の影響について も調べたが,その影響は大きくはなかった。3. 木材内部まで染色するためには,その木材が染 料の浸透通路を備えていなければならない。しかし,木材がこの条件を備えていても,染料の浸 透実験の結果,内部まで浸透しやすい染料は非常に少ないことが分かった。また,染料の浸透速 度は染色条件の違いで非常に異なった。さらに,木材内部への染料の浸透は木材−染料,染料− 溶媒,溶媒−木材の相互関係で決定されることが分かった。従って,木材染色の良否は以上の相 互関係で変化することが明らかになった。
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−森林総合研究所研究報告−
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