森林土壌中の水移動におけるパイプ孔隙の特性に関する研究

北原 曜

   要旨

 森林土層中の水移動形態の中で極めて大きな比重を占めると 考えられるバイプ流について,実態観測及び水理実験をもとに,その特性を明らかにした。対象 地は,地質,地形などが異なる2か所で,各斜面にトレンチを掘削し,パイプの型,分布,直径, 流量などを観察し,その諸特性を明らかにする一方,1次谷の流量との比較検討を行った。各トレ ンチには多数のパイプが見出され,植物根系起源のA型と化学的侵食のB型,さらに流出時以外 には肉眼で確認できないC型の3型が存在した。支所実験林内ではA型とB型が認められ,両型 は分布深,直径が明確に異なった。定山渓流域試験地ではC型が認められた。全型ともパイプ流 はマトリックス流に対して明らかに卓越していた。パイプの分布は集中分布型,流速は0.5〜3.1 p/sであった。A型パイプを含んだ非攪乱土壌サンプルの透水試験の結果,パイプ流はDARCY-WE ISBACHの式がよく適合し,MANNINGの粗度係数はA型が0.4前後,C型が4前後であった。パイプ 流出の時系列的変化についは,1次谷の河川流量のうち少なくとも側壁斜面からの流出は大部分 がパイプ流量であった。各パイプからの流出ハイドログラフは互いに近似な波形を示した。パイ プの諸特性を組み込んだモデルは,観測値と比較的よく一致した。森林土層の発達過程に及ぼす パイプ流の影響について,流出機構,崩壊機構,地形発達機構との関係を考察した。

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−森林総合研究所研究報告−
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