(研究資料)

オイルパーム実生のリグニンについて(英文)

富村洋一

   摘要

 発芽後1年目のオイルパーム実生から磨碎リグニン(MWL)を 調製し,さらにその抽出残渣を酵素分解して,酵素分解リグニン(EL)を得た。また比較のため25年 生の成熟材を維管束と柔組織に分割した上で,それぞれからMWLとELを調製し,実生からのものと の違いを検討した。実生からのリグニンは成熟材からのリグニンに比較してタンパク質が多く含まれて いた。成熟材柔組織からのリグニンは最も多くのp-オキシ安息香酸エステルを含み,一方成熟材維管 束からのリグニンは最も多くのシリンギル核に富んでいた。実生と成熟材柔組織からのMWLはシリン ギル核/グアヤシル核の比がほぼ等しく1であった。またすべての試料でELはMWLよりもシリンギ ル核の割合が多く,残渣リグニンはシリンギル核に富むことが示唆された。材に含まれる糖の構成割合 は大きな差が見られなかったが,リグニン中に含まれる糖はMWLの場合キシロースが圧倒的に多いが ELではグルコースもかなりの割合を占めるようになり,特に実生の場合キシロースとグルコースの割 合は,ほぼ等しかった。また成熟材では磨碎により抽出されるMWLの収率が高く,ELの収率が低い のに反して,実生の場合MWLの収率が低く,酵素分解で得られるELの収率が高いことから,実生の リグニンは成熟材のリグニンよりも糖と結合している部分が多いと推定された。

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−森林総合研究所研究報告−
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