労働科学的視点を考慮したトラクタ集材路の幾何構造と路網密度に関する研究

今冨裕樹

   要旨

 本研究はトラクタ集材路の幾何構造と路網密度に関してトラクタ自身の走行性能や経済的視点 から検討するとともに労働科学的視点からも検討を加え,オペレータの労働負担軽減につながる集材路の 幾何構造と路網密度を検討した。その結果,最大縦断勾配はクローラタイプでは10゜程度,ホイールタイプ では13゜程度が望ましいものと考えられた。曲線半径は30m以上の単曲線,幅員は3.5m程度以上あること が好ましいと考えられた。投入費用を最小とする経済的視点からみた集材路網密度は林地傾斜0゜で117. 8m/ha,10゜で100.1m/ha,20゜で87.9m/ha,30゜で95.4m/haと推定された。労働科学的視点からみた集材路 網密度は林地傾斜0゜で60.5m/ha,10゜で73.6m/ha,20゜で125.9m/ha,30゜で180.6m/ha必要であることが分 かった。労働科学的視点から求めた路網密度は作業者サイドからみて最小限必要とされる投入量であり, さらに路網密度を高めることにより労働負担の軽減が期待される。また,急峻な傾斜地では作業者に負荷 される筋力負担や生理的負担がより大きくなることから安全サイドに立った視点がより重要視されるべきで あると考える。よって,林地傾斜15゜以下の緩傾斜地では経済的視点から求めた路網密度を目安として,地 形傾斜15゜を超えるような林地では労働科学的視点から求めた路網密度を目安として設計されることが望 ましいと考えられた。

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  −森林総合研究所研究報告−
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