民有林の地域森林計画における収穫予測に関する研究(第2報)
−新しい収穫予測モデルの開発−
野 田 巌
要 旨:本研究の目的は,民有林の地域森林計画樹立に当たって有効な新しい収穫予測法を確立するとともに,その成果が全国森林計画樹立に寄与することである。本報告ではまず,前報で明らかになった減反率法の改善策をもとに開発した「新しい収穫予測モデル」を提示した。本モデルを地域森林計画に適用するにあたっての有効性を検証するために飛騨川地域森林計画区に適用し,その再現性,予測精度を評価した。その結果,森林現況,伐採面積,収穫量のいずれも極めて高い精度で再現,予測された。このことから,本予測モデルは地域森林計画における収穫予測法として極めて価値の高いことが明らかになった。次いで,本予測モデルの有用性を明らかにするために,この収穫予測モデルと既存の木材需要予測モデルを丸太市場モデルで連結した「木材需給均衡モデル」を作成した。そして,全国森林計画への応用可能性を探るため,本システムを用いて全国民有林人工林の収穫予測を行った。その結果,本システムで算出される森林現況,伐採面積,収穫量,それらと同時に予測される木材需要量のいずも再現性,予測精度は極めて高いことが認められた。従って,今回作成した木材需給均衡モデルは,全国森林計画樹立における収穫量,森林資源,林産物需給量の予測に有効なシステムとしてばかりでなく,シミュレーション的利用によって,政策上の支援情報を得る意志決定支援システムとして利用できることが考えられた。