プレスリリース

平成20年 8月29日


アルカリ蒸解・酵素法による木質バイオエタノール
製造システムの実証を開始します

                      独立行政法人 森林総合研究所


  (独)森林総合研究所は、林野庁による平成20年度森林資源活用型ニュービジネス創造対策事業において、「木質バイオエタノール製造システム構築の実証事業」を行います。(独)森林総合研究所が事業実施主体となり、東京大学、早稲田大学、秋田県立大学と共同で行い、秋田県および北秋田市の協力を得て同市内に実証プラントを設置します。
  なお、基本となる技術は、農林水産省の委託プロジェクト研究「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発(18年度)」及び「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発(19~23年度)」において開発した、木材からのバイオエタノール製造法である、アルカリ蒸解と同時糖化発酵を組み合わせた「アルカリ蒸解・酵素法」です。


代表者  : 独立行政法人 森林総合研究所 理事長 鈴木 和夫
研究推進責任者: 森林総合研究所 研究コーディネータ  山本 幸一
研究担当者  :

バイオマス化学研究領域  真柄 謙吾、大原 誠資
きのこ・微生物研究領域  野尻 昌信

広報担当者  : 森林総合研究所 企画部研究情報科長  中牟田 潔
     Tel:029-829-8130
        029-829-8134
     Fax:029-873-0844

【概要】
バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議は、「国産バイオ燃料の生産拡大工程表(平成19年2月)」の中で、2030年における木質バイオマスからのバイオエタノール生産可能量を200万kL~220万kLと推定しています。また林野庁は、「木材産業の体制整備及び国産材の利用拡大に向けた基本方針(平成19年2月)」において、利用されていない林地残材850万m3の有効利用を掲げています。
   これらの政策の実現を図るため、(独)森林総合研究所は、平成18年度に農林水産省の委託プロジェクト研究「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発」において開発した「エタノールの製造方法」(特開2008-92910)を基礎技術として、林野庁が公募する平成20年度森林資源活用型ニュービジネス創造対策事業に応募し採択されました。
  本事業は、東京大学、早稲田大学、秋田県立大学と共同で行い、秋田県および北秋田市の協力を得て同市内に設置する実証プラント(図1)を用いて、平成20年度から24年度までの5年間にわたり技術実証及び施設改良を行います。
  バイオマス原料は、食糧と競合する恐れがないスギ林地残材等を用います。木材中に含まれるリグニンを分離するために水酸化ナトリウム水溶液による「アルカリ蒸解法」を用い、さらに得られたパルプ中の多糖類(セルロースとヘミセルロース)を糖化、発酵してバイオエタノールを製造するために酵素と酵母による「同時糖化発酵法」(図2)を用います。実証プラントでは年間125kLの規模で生産を行い、5年後に木質バイオマス1トン当たりバイオエタノール250Lの収率、および100円/Lの生産コスト実現を目指します。本事業におけるバイオエタノール製造システムのブロックフローシートを図3に示します。
  なお、本事業は、北秋田市が平成20年10月に農林水産省に提案予定であるバイオマスタウン構想にも位置づけらる予定です。


【用語解説】

・セルロース・ヘミセルロース ・リグニン: 木材を構成する化学成分。多糖類であるセルロース・ヘミセルロースは、単糖に分解しエタノールに変換することが出来る。その際に、リグニンは副産物として回収され、燃料やプラスチック原料となる。
・アルカリ蒸解法: 木材のパルプ化法の一つ。木材チップに水酸化ナトリウム水溶液を加えて、170℃で2時間、煮ることで木材からリグニンを分離できる。
・同時糖化発酵: セルラーゼやキシラナーゼなどの酵素を用いて、リグニンを分離して除いた木材パルプ中のセルロースやヘミセルロースをグルコースやキシロース等の糖に変換し、それらの糖類を酵母により同時にエタノールに変換する。


図1 バイオエタノール製造プラントの完成予想図
 図1 バイオエタノール製造プラントの完成予想図


図2 木質バイオマスの同時糖化発酵実験装置
図2 木質バイオマスの同時糖化発酵実験装置


図3 バイオエタノール製造システムのブロックフローシート
図3 バイオエタノール製造システムのブロックフローシート

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