スギの冠雪観測
冠雪とは樹木の樹冠へ雪が堆積することで,その荷重によって枝折れや幹曲がり,幹折れ,根返りなどの被害(冠雪害)を発生させます. 林業試験場では1950年頃に防災部雪害研究室長の四手井綱英氏,十日町試験地の高橋喜平氏,秋田支場釜淵分場の高橋敏男氏らが中心となって,冠雪の物理過程に関する研究を世界に先駆けて実施しました.
高橋喜平氏は,樹木の雪害を起こすような冠雪は,どのような気象条件で起るかを明らかにするために,十日町試験地において冠雪の荷重を測定する装置(図1,図2)を考案し,1949~1950年の冬季にスギの冠雪の観測を実施しました.その結果,① 日中は日射による融解によって冠雪は滑落するため,夜間の日射のない時に冠雪は発達しやすいこと(図3),② 降雪時の気温が0°C近辺のときに冠雪が発達しやすいこと(図4),③ 冠雪は風による動揺や吹き払いによって落下し,風速3 m/s以上では冠雪は発達しないこと(図5)を明らかにしました. これらの研究成果は,現在も続く冠雪害の発生機構の解明に関する研究や,被害を軽減するための林業施業の研究において,極めて重要な基礎となっています.
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![]() (冠雪率: 降雪水量に対する冠雪重量の増加率) (高橋, 1952; 1953) |
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