観測データの読み方

観測年月について

 各観測の観測年月は、観測開始日の属する年月で代表します。
 たとえば、2011年12月29日に開始した場合は、観測期間の大部分が2012年1月だったとしても、2011年12月が観測年月です。

稼働時間と撮影頻度について

 kml表示により各地点の稼働時間や動物の撮影頻度が数値と記号の大きさで示されます。
 装置の稼働時間は24時間を1単位として記号dで表しています。撮影頻度は1d(すなわち装置稼働24時間)あたりの撮影枚数です。

たとえば、100dであれば、稼働時間が延べ100日(2400時間)で、この間に5枚撮影があったとすると、撮影頻度は0.05です。昼夜24時間通して装置が稼働する形で観測が行われた場合、撮影頻度は、装置稼働1日あたりの撮影枚数と読み替えられます。ただ、夜だけ装置が稼働する形で観測が行われた場合にも、比較のために24時間を1単位として撮影頻度を計算します。この場合の撮影頻度は、1日あたりではなく、あくまで24(夜)時間あたりとなることに注意が必要です。

なお、夜だけ稼働の場合、稼働時間を示す記号がグレーで表現されます。24時間稼働の場合は白です。

撮影頻度の比較について

本観測では、林道を通過する動物の量を撮影頻度の形で捉え、動物の数の指標として扱います。ただ、その解釈には注意が必要です。

まず、撮影頻度の種間比較は実質的な意味を持ちません。なぜなら、種によって行動パターンが違い、どの種も同じように林道を利用するわけではないからです。さらに、動物は体が小さいほど検知されにくく、これも撮影頻度に影響します。このため、撮影頻度の比較は同じ種内で行なって初めて、個体数や生息密度の指標として有効です。

同じ種でも地域間の比較には注意が必要です。地域によって林道を取り巻く環境が異なり、獣道としての林道の位置づけが必ずしも等しくないためです。

同じ地域で同じ種について年次間の比較をする場合でも、時期を揃える必要があります。野生生物には、普通年に1回の出産期があります。出産期に動物の数は生まれた子供の分だけ増加し、その後次の出産期まで死亡によって減り続けます。毎年この増減が繰り返される訳です(1年間の増減の差が年次的な数の変化となります)。さらに、自動撮影では、成長して活動するようになるまで子どもは撮影対象になりにくく、季節による活動レベルや行動パターンの変化も撮影頻度に影響します。このように観測時期の違いは結果を大きく左右します。したがって、時期の揃わない年次間の比較にはあまり意味がありません。

本観測ネットワークでは毎年同じ地点で同じ時期に観測を行うことを基本とし、得られた撮影頻度を年次間で比較することによって動物の数の変動を探ります。ただ、この基本に従ったとしても、その他の要因による撮影頻度のばらつきはどうしても残ります(例として、野幌森林公園のキツネの解説を参照)。さらに、単に確率的な変動もあります(確率的な変動は、一般に撮影枚数が少ないほど影響が大きくなります)。しかし、たとえば、撮影頻度に大きな変化が見られた場合、減少あるいは増加傾向が何年も続いた場合には、生息密度の変動を反映している可能性が高いと考えられます(例として、野幌森林公園のタヌキ、奥定山渓のシカを参照)。撮影頻度という量的なデータに基づいて、野生生物の生息動向を探る試みはこれまであまりありません。データを蓄積しながらデータの特性を検討していくことになります。

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