失敗しないために
森林総合研究所・北海道支所
自動撮影調査は、基本的に装置任せの調査です。多くの方が簡単にできると思って調査に取り組みます。
しかし、動物の写真を得るだけならともかく、量的なデータを得るのはそう容易ではありません。
侮って手を抜いたら、まず確実に調査はうまくいきません。多くの落とし穴があるからです。
データに不備があると、データ処理に何倍もの時間と手間がかかります。それでもデータが使えればまだましです。
場合によってはデータが使えず、せっかくの調査が完全に無駄になることもあります。
ここでは、代表的な失敗例を紹介し、失敗をしないため、繰り返さないための方法を提案します。
1.時計設定の間違いによる失敗
 時計設定の失敗は非常に多く見られます。
  1)そもそも初期の時刻設定をし忘れて、最初から日時があっていなかった
  2)フィルムカメラで、
    日時データを写し込むための設定をし忘れたり、そのやり方を間違った
    日時分を写し込むべきところ、年月日を写し込む設定にしてしまった
  などの失敗があります。
  その結果、撮影時刻が不明になり、極めて重要なデータを失うことになります。

  さらに、日時分だけチェックして年月を合わせなかったため、月をまたぐと日付がずれてしまった例もあります。
  問題に気づけば修正可能ですが、データ処理が煩わしくなります。問題に気づかなかったときは誤った結果を得ることになります。

2.時計の狂いによる失敗
 多くの人は、装置の時計を信頼して、チェックを怠ります。それは失敗のもとです。
 時計が狂うことを前提として、チェックを怠らないことが必要です。
 
 時計が狂っても、それに気がつけばまだ良い方です。問題が大きいのはこれに気が付かなかった場合です。
 そのまま気づかずにデータを整理・分析してしまうと、誤った結果を得ることになり、非常に危険です。
 自動撮影を使った調査や研究の第一の目的は、自然(の状態)を正しく知ることです。データが間違っていると、その目的が果たせません。
 
 では、チェックはどう行うか。作業記録をとることです。詳しくは、次項を参考にしてください。

3. 装置の設置に伴う失敗
 1)不適切な装置の向きと高さ
    装置の向きと高さは、調査目的や使用機種、設定感度に合わせて調整する必要があります。これは、結果を大きく左右します。
    この重要性を理解している人は非常に少ないのが現状です。検知技術に関する理解が不十分なためです。
    設置が不適切な調査で得られたデータは信頼できません。しかし、結果だけ見てもそれがわからないところが厄介です。
 2)不十分な草刈り
   草刈りを怠ったり、十分でないと、その揺れに反応して、無駄な撮影が多く行われることになります。
   フィルム装置では撮影枚数の制約のため稼働期間が短くなります。デジタル装置ではファイル数が増大し、データ処理の手間も増大します。
   多くの人が装置の前には気を配ります。しかし、装置の横や背後にある丈の高い草、上から垂れ下がった枝などにも注意が必要です。
 3)稼働チェック撮影の不履行
   稼働チェック撮影を怠ると、装置の稼働時間が計算できません参照 )。稼働時間がわからないと、撮影頻度が計算できません。
   また、稼働チェック撮影時刻の手作業の記録を怠ると、装置の時計にトラブルがあったときに対応できません

では、こうした失敗を避ける、あるいは繰り返さないためにはどうしたら良いのか。次の三つが必要です。

1.予備調査を行うこと。
 一度、実際に失敗するのが、最も効果的な失敗防止策です。次から気をつけるからです。
 そのためには失敗が許される予備調査を行うことが必要です。予備調査で失敗しやすい所や問題がわかれば、本調査のために必要な修正も可能です。
 一般にどんな調査でも予備調査は必要ですが、装置任せで、調査途中には問題がわからず、修正が効かない自動撮影調査では特に重要です。

 自動撮影調査は、装置依存性が高いので、装置の特性を見極める意味でも予備調査が不可欠です。
 初めて使う装置を箱から出して、いきなり本調査を始めた例を見たことがありますが、そうしたやり方で信頼できる結果は得られません。

 初めての調査結果は何らかの問題のためにまず使えないと理解してください。最初は、予備調査として、調査後すぐ結果を検証することが必要です。

2.作業記録をとること
 1)準備段階
   使用機種と型番、装置の設定(日時を含む)、装置の電源電圧を記録すること
 2)調査段階
   装置の設置・中間チェック・回収時に稼働チェック撮影を行い、その時刻を記録すること(参照
   装置・フィルム・メモリカードの交換時には、その前後にチェック撮影を行うこと
 こうした記録があると、トラブルがあったときに原因探求が容易になります。原因がわかると、次に活かせます。
 稼働チェック撮影時の時刻記録があれば、装置の時計の狂いの有無をチェックできます。
 さらに、装置のトラブルで撮影時刻が記録されなくても、稼働時間および撮影頻度の計算は可能となり、瀕死のデータを不十分ながら救うことができます。  

3.速やかなデータ処理を行うこと
  調査後直ちにデータ処理を行うのが鉄則です。これによって調査がうまくいったかどうかがわかります。
  問題に気づかず、不適切な作業を続けたり、不具合のある装置を使い続けることを、これによって防げます。
  直ちにデータ処理を行うことによって、失敗を最小限に抑えることができます。