更新日:2013年3月5日
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再造林のコストを抑えるために、林業技術や施業のあり方を見直すことが求められています。
森林総合研究所東北支所では、九州地域での先行事例を参考にしながら、東北地域での低コスト再造林システムの構築をめざした交付金プロジェクト
「多雪地域の森林資源持続に向けた低コスト再造林システムの構築(H24−27代表:森林総合研究所東北支所長)」を立ち上げました。
今回の講演では、このプロジェクトで取り組む課題のいくつかを紹介しました。
植栽の効率化やその時期の弾力性を高めるうえで、コンテナ苗が注目されています。
通年植栽可能で植栽方法も簡単、活着も良いといったコンテナ苗の利点は、九州で実証されています。
しかし、従来の3年生普通苗に比べると、徒長気味にも見える1〜2年生のコンテナ苗が、東北地方の多雪気候下で良好な成長ができるのか、といった点を始めとして、現地実証試験によってその成長を確かめる必要があります。
そこで、国有林や東北各県の林業試験場をはじめとする関係機関とともに、積雪の多寡による苗成長の違いを明らかにする調査を開始しました。
まだ調査期間や調査箇所は十分とはいえませんが、スギ、カラマツのコンテナ苗ともに、直径成長や樹高成長で普通苗と遜色ない成長が期待できる結果を得つつあります。
ただし、普及し始めたばかりのコンテナ苗は、苗の品質の差が初期成長速度に影響していることも考えられるため、より多くの事例を収集解析する必要があります。
九州では、車両系伐出機械の共有とコンテナ苗の導入によって、伐採•搬出から地ごしらえ、植栽までを同時におこなう「一貫作業システム」が開発され、各段階の施業の大幅な省力化と経費削減が見込まれています。
積雪期間が長い東北地域では、このシステムをそのまま導入できる場所は限られますが、その形式を変える(例えば、初冬に伐採する場合、同時に地拵えまで行い、翌春に植栽する)ことで有望な技術になると思われます。
再造林の低コスト化には、このような新しい伐採植栽システムに加えて、下刈り省略や低密度植栽といった施業体系上のあらゆる段階で省力化をすすめることが重要でしょう。
こうした見直しには、先行研究で開発された育林コストシミュレータ等を活用して、施業体系全体を通した利益とコストを総合的に管理することが有効とおもいます。
このプロジェクトでは、これらの課題の他にも多雪地域に適したコンテナ苗の生産技術や、雪害抵抗性スギ品種のコンテナ苗の現地適応性、コンテナ苗植栽をはじめとする林業新技術の普及過程の解明などにも取り組みはじめています。
いずれの課題についても、林業の現場、行政、研究機関の連携なしには進められません。関係機関の方々には、今後とも調査研究のご協力どうぞよろしくお願いします。
昨今の紫波町での激甚な松くい虫被害や、盛岡市をはじめとする周辺市町への被害拡大に見られるように、東北地方において松くい虫の勢力拡大が続いている。
このような状況に接していると、「東北地方は寒いので松くい虫被害は広がらない」という期待はむなしいものであったように思える。
しかし、現在の被害発生状況は、従来より温度環境などを元に予測されていた範囲を超えるものではない。まずは冷静に現状を受け止めることが大切である。
我々は、東北各地のマツ林に固定調査林分を設置して、松くい虫によるものを含むマツ枯死木の発生状況を調査してきた。
被害の進み方は調査地により様々であり、一気に被害が進んで数年の内に7割の木が枯死してしまった場所があった一方、
加害生物であるマツノザイセンチュウやマツノマダラカミキリが生息するのに被害拡大に至らない例や、多数の枯死木が発生していた調査地で相当数のマツの木が残っているのに被害が終息してしまう例もあった。
これらの事例から、東北地方の松くい虫被害は条件により自然に沈静化する、という西南日本とは異なった特徴を指摘できる。
岩手県における近年の松くい虫被害拡大に、ここ数年の夏の高い気温が影響したことは間違いないだろう。
であれば、被害拡大対策を考える際にも、偶発的に生じる「寒い夏」を想定に組み込んでおくことは有効であろう。
また、被害が自然に沈静化する可能性を前提とすれば、激害地での防除目標を根絶ではなく微害維持におくことも可能であろう。
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