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更新日:2021年6月9日

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里山のマツ林再生への取組-京都市内での抵抗性アカマツの現地適応試験-

令和3年6月9日

アカマツは、日本の里山に普遍的に存在していましたが、マツ材線虫病のため、林分の衰退が進んでいます。アカマツ林は林業・木材生産の面でも有用な一方で、里山の構成要素としてのアカマツは、生態的・景観的にも重要であり、借景を取り入れる社寺庭園が多い京都では、里山で欠かせない樹木になります。関西育種場では、里山の緑豊かな自然景観を保全・育成するため、平成22年度から京都市や京都大阪森林管理事務所(林野庁)、法然院と共同で、マツ材線虫病に強い抵抗性アカマツを植栽し、京都の環境条件に適した系統や生育条件等を検討するための現地適応試験を行っています。

京都市とは、小倉山、桂坂、洛西ニュータウン(以下「洛西NT」という)、銀閣寺山、船岡山の5か所で共同試験地を設定しており、試験開始から6~11年が経過しました。桂坂の試験地では、試験地の土壌が薄いため、斜面に杭をうち、そこに板を立て、斜面上側に土壌を入れて植栽しました(写真1上)。試験地設定から9年経過後には立派に成林しています(写真1下)。洛西NTの試験地では、3本をひと塊にした巣植えで植栽しました(写真2上)。この試験地も立派に成林し、現在では、広葉樹と競合状態になっています(写真2下)。京都大阪森林管理事務所・法然院とは、銀閣寺山で共同試験地を複数設定し、8年が経過しました。銀閣寺山国有林の試験地では、いくつかのプロットでは植栽後3年次には下層木と競合状態でしたが(写真3上)、調査の度に除伐を行い、現在では成林しつつあります(写真3下)。現時点では多くの試験地で、抵抗性アカマツによりアカマツ林の回復が確認できています。

一方、マツ材線虫病は、植林後10年程度から発生すると考えられており、今後これらの林分の管理方法について、それぞれの森林の所有者と協議する必要があります。また継続的な調査により、現地抵抗性の高い系統も明らかになってきており、これらの情報をフィードバックして、マツノザイセンチュウ抵抗性育種を進めていきたいと考えています。

 

写真1上 桂坂試験地(2011年3月設定、2011年11月撮影) 写真2上 洛西NT試験地(2012年3月設定、2014年1月撮影) 写真3上 銀閣寺山試験地(2013年2月設定、2016年2月撮影)
写真1下 桂坂試験地(2020年6月撮影) 写真2下 洛西NT試験地(2020年6月撮影) 写真3 銀閣寺山試験地(2020年6月撮影)

写真1 桂坂試験地

(2011年3月設定、2011年11月撮影(上)、2020年6月撮影(下))

写真2 洛西NT試験地

(2012年3月設定、2014年1月撮影(上)、2020年6月撮影(下))

写真3 銀閣寺山試験地

(2013年2月設定、2016年2月撮影(上)、2020年6月撮影(下))

(関西育種場)

里山のマツ林再生への取組-京都市内での抵抗性アカマツの現地適応試験-(PDF:426KB)

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