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更新日:2021年10月19日

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育種で病気に対抗する!マツ枯れ抵抗性を調べる接種試験を行いました

令和3年9月22日

流行病(はやりやまい)は樹木も怖い!?

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以来、毎日のニュースで感染者数が流れるようになりました。流行病が脅威となるのは樹木も例外ではなく、マツ類ではマツノザイセンチュウという線虫が引き起こす「マツ材線虫病」によって生じるマツ枯れが全国的に問題となっています。マツノザイセンチュウは体長1mm程度でマツノマダラカミキリという昆虫によって媒介されます。樹木は動けないので常時“ステイ・ホーム”。されど、カミキリを避けることができるわけではありません。日本で最も深刻な樹病ともいわれるこの病気は、20世紀の初めに長崎県で初めて確認され、現在では沖縄から青森まで日本全国に被害が広がっています。

接種試験でマツ枯れ抵抗性品種を探す

林木育種センター(茨城県日立市)ではマツ材線虫病への対策として、マツ材線虫病の耐性を持ち感染しても枯れにくい品種の開発を進めています。具体的には、候補となるアカマツ、クロマツの苗木に病原性の線虫を接種し、健全率や生存率の高い系統を病害耐性ありと判断して選抜していきます。今年も7月20日に約2,600本の苗木に線虫接種を行いました。(各育種基本区に適した品種を選抜するため、同様の接種試験を各育種場等でも行っています。今年は、上記を含め、7月中にのべ6カ所にて合計20,700本の苗木に接種を行いました。)

普段は細々と培養している線虫を3週間かけて接種用に大量培養します。顕微鏡で線虫の数と活性を確認しながら、病原性線虫の頭数を調整した懸濁液を準備します。専用のノコギリで苗木に傷をつけ、傷つけた箇所に線虫の懸濁液を接種します。接種忘れがないかを目視で確認できるように、懸濁液に食紅で彩色しています。接種直後に雨が降ると、せっかく接種した病原性線虫の懸濁液が流れてしまう恐れがあります。また、枯れにくいマツを明らかにするためには、暑い時期に接種を行うことも重要です。そのため接種試験は天気予報とにらめっこしながら、接種の効果の出やすい暑い時期の晴天の日に行います。樹木に厳しい環境は人間にとっても厳しいので、接種作業を行う際、熱中症対策は必須です。

健全なマツ林造成のために

接種試験で生き残った系統から選ばれた抵抗性品種は、マツ枯れに強い苗木の種子生産のために活用されます。またこれらの品種を掛け合わせて交配することで、新たな次世代品種の作出に向けた取組も進めています。日本国内において健全なマツ林を造成するためにも、これらからもマツ枯れに強い品種の開発を進めていきます。

 

接種部位の準備 接種が完了した苗木 接種作業風景
接種部位の準備.専用のノコギリで苗木に傷をつけます 接種が完了した苗木.線虫の懸濁液は食紅で彩色しているので(矢印)、接種が完了した苗木は目視で確認できます 接種作業風景.接種作業は二人一組で効率的に行われます.炎天下、日陰のない苗畑で作業を行うため、様々な熱中症対策が欠かせません

 

↓マツノザイセンチュウ接種試験の動画
育種で病気に対抗する!マツ枯れ抵抗性を調べる接種試験を行いました(動画)(外部サイトへリンク)
 

(育種部 育種第二課 木村)

育種で病気に対抗する!マツ枯れ抵抗性を調べる接種試験を行いました(PDF:1,665KB)

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