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更新日:2022年1月26日

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カラマツ採穂木仕立ての取組

令和3年10月13日

カラマツにおいても第二世代精英樹(エリートツリー)の選抜が進められ、令和2年度末現在、関東育種基本区では78系統のカラマツエリートツリーが開発されています。それらのうち、62系統は間伐等特措法に基づく「特定母樹」(※注)に指定されているところです。これらのエリートツリーは次の世代を創出するための育種母材であり、また、特定母樹としての原種配布等の元となる重要な資産(育種素材)でもあり、次世代の育種に向けて必要となる各種データを得るため様々な条件下で試験地を造成したり、都道府県等の要望に応じて原種配布を継続的・安定的に行うため、つぎ木によるクローン増殖に必要な穂木を安定的に供給することが大切になります。検定林等で選抜されたエリートツリーの原木のほとんどは自然樹形で枝下高が高く、穂木の安定的な供給は困難です。このため、エリートツリーを場内にクローン保存し、安定的に穂木を供給するための採穂木を集約して管理できる採穂園の整備が必要です。

 こうした穂木の安定的な供給を目指した採穂園整備の手法として、今回は、H30~R2に実施した初回の樹形誘導作業で断幹とともに剪定を行った方法と初回は断幹のみで2年目以降から剪定を行った方法について紹介します。

なお、カラマツの採穂木の仕立て方については、過去に東北育種場で実施された事例を参考に、樹形誘導後の作業のしやすさを考えて断幹位置の高さを1.2mとしました。また、初回の剪定は幹から20cm程度の枝を残し、翌年以降は新たに伸長した枝の付け根付近にある芽を2~3芽残して剪定を行うこととしました。

 

H30.7.18 1年目 R1.8.2 2年目 R2.7.21 3年目

H30.7.18 1年目

(H30.3 初回断幹・剪定 断幹・剪定時の樹高は

3.1m、根元径は3.1cm)

R1.8.2 2年目

(H31.2 2回目剪定 剪定時の根元径は4.1cm)

R2.7.21 3年目

(R2.2 3回目剪定 剪定時の根元径は4.7cm)

写真1 つぎ木の4年後(植付から3年後)に断幹及び剪定を同時に行った例

 

 

H30.7.18 1年目 R1.8.2 2年目 R2.7.21 3年目

H30.7.18 1年目

(H30.3 初回断幹のみ断幹時の樹高は2.2m、

根元径は2.8cm)

R1.8.2 2年目

(H31.2 初回剪定 剪定時の根元径は4.2cm)

R2.7.21 3年目

(R2.2 2回目剪定 剪定時の根元径は4.5cm)

写真2 つぎ木5年後(植付から2年後)に断幹のみ、翌年剪定を行った例

 

 断幹や剪定は成長休止期の2月~3月に実施し、その年の7~8月に芽吹きの状況を撮影しました(写真1・2)。撮影にあたっては、同一の個体を同じ位置から撮影するようにして、樹形の変化を把握しやすいように心がけました。薄い緑色をした枝が当年枝で、冬期にこれを穂木として採取します。

初回に断幹と剪定を同時に行った方法では、翌年から幹の上から下までバランスよく新芽が伸びており、まんべんなく穂木が採取できる樹形となっています。3年目になると枝数も増え、より多くの採穂が期待できそうです。

他方、初回は断幹のみ、翌年から剪定を入れた個体では、断幹の翌年に断幹部付近からは新しい芽が伸びていますが、それ以外の下部では既存の枝がそのまま伸びるという状態になりました。2年目に剪定を入れたことにより、幹から胴吹きする新芽もみられ、3年目になるとさらに枝が増え、バランスの取れた樹形になりつつあります。

断幹と剪定を一度に行うことによる樹体への負担の大きさを考え、初回に断幹、翌年から剪定を行うやり方もありますが、今回の試験では、これらを同時に行っても問題なさそうです。一方、下枝があまり張っていない場合には、初回は断幹のみにすることも有効かもしれません。樹体サイズが今回よりも小さい時期から手を入れるとどうなのか、あるいはもう少し大きく育成してから手をいれるとどうなのか、それぞれの場合に穂木はどれくらい確保できるのか等、まだ課題もありますが、それらについては今後の調査により明らかにしていきたいと考えています。今後、機会がありましたら改めてご紹介したいと思います。

(育種部 原種課)

(※注)「特定母樹」の詳細については下記サイト(林野庁)をご覧ください。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/kanbatu/boju.html(外部サイトへリンク)

 

カラマツ採穂木仕立ての取組(PDF:722KB)

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