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更新日:2022年1月26日

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保護林の未来の予測を目指して~モニタリング調査~(後編)

令和4年1月12日

(今回の記事は、令和3年12月22日に掲載した記事の後編となります)

☆6年ぶりの大豊作!?ブナの結実量をモニタリング!

「ブナ」は冷温帯に広く分布し、日本を代表する樹木のひとつです。ブナの果実はクマやネズミの大好物ですが、結実量の年変動が非常に大きく数年に一度の割合で大豊作になります。

当センターが調査を行っている林分(会津森林管理署南会津支署管内・会津森林生態系保護地域;写真6)では、シードトラップと呼ばれる落下してきた種子を受けて採取する仕掛け(写真7)を使用して、15年間にわたって結実量の調査を続けています。ブナの結実は地域や個体による差が大きいため、過去には、他の地域で豊作だと聞いて期待しながら調査に行ったが全く結実していなかったこともあります。

作業としては、種子が落ち始める9月下旬までにシードトラップを設置し、一ヶ月後に回収する流れです。本林分がある福島県檜枝岐村は雪深い地域のため、時期が遅くなると苦労して設置したトラップが回収できなくなることから計画的な調査が重要です。本林分の設置地は大きな笹が生い茂る場所を抜けて行かなければ辿り着けない場所にあります。そのため、目的地や現在地がわからなくなり遭難してしまう恐れがあるため、GPSを利用したり、入林場所から目的地まで数メートル間隔で目印をつけるなどして安全を確保しています。今年度はシードトラップを設置した時点でここ数年では見られないほどたくさんの結実があり、既に落ち始めていた種子を拾っただけでも相当な量がありました(写真8)。

一ヶ月後、今年は「大豊作か⁉」と思いワクワクしながらシードトラップを回収しに行くと、驚くことに多くのトラップが何者かによって破壊されていました(写真9)。破壊の痕跡や周辺に大きな糞があったことから、犯人は野生のクマだと考えられました。ワクワクしていたのは私たちだけではなく、野生のクマも同じだったようです。そのような被害がありながらも、今年度はとてもたくさんの種子を採取することができ、2015年以来実に6年ぶりの大豊作となりました(写真10)。来年以降、クマやネズミが食べきれなかった種子が発芽し成長していくことが期待できますので、これからの調査が楽しみです。

檜枝岐村は、福島県でも有数の温泉地であり、シードトラップ回収の時期は紅葉が見頃(写真11)ということもあり、毎年多くの方が訪れる観光スポットにもなっています。

 

写真6ブナ天然林 写真7シードトラップ設置
写真6 ブナ天然林 写真7 シードトラップ設置
写真8拾ったブナ種子 写真9破壊されたシードトラップ
写真8 拾ったブナ種子 写真9 破壊されたシードトラップ
写真10シードトラップ回収 写真11檜枝岐村の紅葉
写真10 シードトラップ回収 写真11 檜枝岐村の紅葉

 

(遺伝資源部 保存評価課)

保護林の未来の予測を目指して~モニタリング調査~(後編)(PDF:483KB)

 

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