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令和4年6月22日
小笠原村役場で自然環境保全に向けた普及啓発などを担当している環境課自然環境係の職員1名が林木育種センター(茨城県日立市)に来訪され、希少樹種オガサワラグワのクローン苗の管理状況などを視察しました。小笠原村と林木育種センターは、オガサワラグワの保全に向けた共同試験を平成29年から進めています。この共同試験は、小笠原村父島内のかつて農地利用していた場所を整備してクローン苗を植栽し(オガグワの森)、活着状況や成長経過を観察・記録することによってオガサワラグワの保全に必要な管理方法を確立することを目的としています。今回視察に来られた職員は、「オガグワの森」の植栽木の管理を担当しており、林木育種センターでの苗木管理や育苗方法を見学するとともに、「オガグワの森」の管理に関わる技術的な課題やそれに対する対処方法について情報交換するために来所されました。
今回見ていただいたのは、林木育種センターがジーンバンクとして収集・保存しているクローンの管理状況です。クローンの保存形態は2通りあり、1つは組織培養技術によって増殖したクローンの培養体であり、もう1つはそれらの培養体から育成した鉢植え苗です。初めに、組織培養による培養体を管理している施設を案内しました(写真-1)。培養体は、現地のオガサワラグワから採取した冬芽を無菌化し、培地に挿しつけて育成したものです。培地上では一定期間を過ぎると徐々に衰弱してしまうため、定期的に新しい培地に植え替えることが必要です。続いて、培養体を発根させ、鉢植え苗にして管理している温室の状況を案内し(写真-2)、潅水と施肥の方法や、病虫害への対処方法について説明しました。温室での苗木管理の手法は、来所された方が日頃取り組まれている「オガグワの森」の植栽木の管理にも活かせるものであるため、私たちの説明に強い関心を寄せて聞いていただきました。樹木の管理は病虫害や気象害などの突発的な問題と向き合う難しい面がありますが、小笠原の現地における日頃の管理状況について聴かせていただくとともに、現在発生している虫害の問題について対処方法を議論するなど有意義な情報交換を行うことができました。最後に、オガサワラグワの茎頂(茎の最上部)や種子を液体窒素中(-196℃)で凍結保存する研究について説明しました(写真-3)。
今回視察していただいた内容が小笠原での共同研究の進展の一助になればと考えています。今後も小笠原村等の関係機関の皆さんとの連携を深めつつ、オガサワラグワの保全に尽力していきます。
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写真-1 組織培養によって保存しているオガサワラグワの培養体の管理状況 | 写真-2 温室でのオガサワラグワの鉢植え苗の管理状況 | 写真-3 オガサワラグワの凍結保存技術についての説明 |
(遺伝資源部 保存評価課)
小笠原村役場職員が視察に訪れました。-希少樹種オガサワラグワのクローン苗の管理状況-(PDF:541KB)
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