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令和4年7月27日
わたしたちは、森林に生えている有用な樹木の種や枝を集め、これらから苗木を作って保存しています。樹木の苗木には、種を発芽・発根させた実生苗、枝を発根させたさし木苗、茎頂(若い枝の先端部分)などの樹木の体の一部や細胞から作り出す組織培養苗などがあります。今回は、土台となる木(これを台木といいます)に他の木の枝(これを穂木いいます)を癒合させて作るつぎ木苗についてお話します。
つぎ木には、その土地の土壌や気候などの環境条件に適さない植物をこれらに適した植物につぎ木することで栽培適地を広げたり病虫害に強い個体を作り出すことができるといったメリットがあることから、古くから造園や農業の分野でその技術が磨かれてきました。平安時代にサクラなどの造園樹木で使われていた記録が残っているほか、今では果樹や野菜などの作物を含め植物全般に応用され、ミニトマトやナスがなっている茎の根元を掘るとジャガイモが出てくる「トムテト」や「エッグアンドチップス」など一石二鳥のハイブリッド野菜も誕生しています(ウェブなどで検索してみてください)。これらの野菜は違う種類の植物をつぎ木して作られましたが、同じ手法でわたしたちは二葉松のクロマツを台木として五葉松のヒメコマツのつぎ木苗を作ってみました。
つぎ木には、切りつぎ、袋つぎ、芽つぎ、根つぎなどのさまざまな手法がありますが、一般にマツ類のつぎ木苗は、台木の幹の丸い切断面の中心を刃物で割り、できた切り込みに下端をくさび状に削った穂木を差し込む割つぎという方法で作られます。今回は割つぎを12本行った結果すべてが成功しました。また、試しに1本の台木に3本の穂木を接いだところすべての穂木が台木と癒合しました。
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➀:クロマツ(黒矢印)に接いだヒメコマツ(白矢印)。➁:1本の台木に接がれた3本の穂木(矢印)。 | ||
➂:クロマツの台木から伸びた枝(黒矢印)はヒメコマツ(白矢印)と外見で見分けられる。 |