ここから本文です。
令和4年8月10日
西表熱帯林育種技術園は、熱帯・亜熱帯産樹種の育種、遺伝資源保全に関する技術開発、海外研修員受入れ等を目的に平成8年5月に設置され、同年12月に沖縄県八重山郡竹富町南風見仲で業務を開始し、平成14年5月に現庁舎新築に伴い現在の場所に移転しました。
以来、Ⅰ.熱帯産等樹種の育種技術の開発 Ⅱ.海外の林木育種に関する技術指導 Ⅲ.熱帯産等樹種の遺伝資源の保存について、研究や技術開発を行っています。
本稿では、これらのうちⅢについて、熱帯林試験係が行っている業務内容の一部を紹介します。
➀亜熱帯樹種の増殖、保存
亜熱帯地域の様々な樹種を播種、つぎ木やさし木、取り木などで増殖し、遺伝資源として園内への保存を行っています。保存する樹種の中にはオオニンジンボクなどの絶滅危惧種もあります。
➁テリハボクの成長量調査
テリハボクはオトギリソウ科テリハボク属の常緑高木であり、太平洋諸島やオーストラリア、東南アジアなどに分布し、日本では小笠原諸島の海岸域や宮古島、八重山などに分布しています。防風・防潮に優れ、街路樹としても使用されています。また、その材質は硬く、木目が美しいため農機具や祭祀のお椀などにも用いられ、シロアリに対しても抵抗性が高いという報告がされています。その他、実から搾られるオイルはタマヌオイルと呼ばれ、美容製品やマッサージオイルなど、様々な物に使用されています。
西表熱帯林育種技術園には、保存や試験などの目的で樹木が植栽されている区画が展示林を含め32区画あります。うち17区画に、国内から収集した83系統1,369本のテリハボクが植栽され、優良木の選抜を行っています。そして、多岐にわたり有用であるテリハボクの特性を評価するため、6月と12月の年2回、それらの樹高と胸高直径、花芽の有無等を調査し、データベースに記録しています。
![]() |
![]() |
テリハボク植栽区画 | テリハボクの実 |
➂展示林に植栽されているハイビスカスの管理
西表熱帯林育種技術園には、一般の方が自由に見て回ることができる展示林があり、多種の熱帯・亜熱帯樹種が植栽されています。それらの一つであるハイビスカスの管理を行っています。つぎ木で増殖したハイビスカスの一部の樹勢が弱まり、枯損が見られるため、個体数が少ない系統をつぎ木や取り木などで増殖し、移植できる大きさまで育成した後、同一系統が同じ列に並ぶよう展示林に移植します。令和4年8月現在、展示林のハイビスカス65系統184本のうち38系統61本の育成を行っています。
![]() |
||
展示林のハイビスカス | ||
![]() |
![]() |
![]() |
➃フクギの探索、保存
フクギはフクギ科フクギ属に属する樹種であり、南西諸島からフィリピンにかけて分布しており、風害に強いことから古来より防風・防潮林として植栽される一方、雌木の落下果実の悪臭が問題となっています。当園で開発した挿し木技術を応用して街路樹としての利用促進を図るため、雄木を中心に西表熱帯林育種技術園において探索収集および保存を行っています。
このように、熱帯林試験係は熱帯・亜熱帯樹種の増殖、保存や技術開発に取り組んでいます。しかしこれまで増殖、保存を行ってきたのは多数ある樹種のうちのほんの一部であるため、今後より多くの熱帯・亜熱帯樹種の増殖、保存に取り組むとともに技術の向上に努めたいと思います。
(指導普及・海外協力部 西表熱帯林育種技術園)