ホーム > 業務紹介 > 林木育種の現場から > エリートツリーの選抜

更新日:2022年12月21日

ここから本文です。

エリートツリーの選抜

令和4年12月21日

みなさん、エリートツリーをご存知でしょうか。エリートツリーは、林木育種センターが開発した第二世代以降の精英樹の総称です。日本ではおよそ70年前、全国の山から成長や樹形が優れた個体を第一世代の精英樹として選抜し、林木育種がスタートしました。選抜された精英樹の成長や材質等の遺伝的な能力を確かめるため、クローン増殖したさし木苗や精英樹同士の交配等で得られた実生苗を育成し、環境が異なる様々な地域の試験地(以後、検定林)に植栽します。それらの検定林での調査結果に基づいて、エリートツリーが選抜されるのですが、その流れについて説明します。

検定林のうち、特性が優れた精英樹を親として交配を行って得られた苗木で造成した検定林を育種集団林といい、これが第二世代の精英樹(エリートツリー)を選抜するための母集団となります。この育種集団林で成長量を定期的に調査し、成長、幹の通直性などが優れ、材質や病虫害等の欠点がない個体をエリートツリー候補木(以後、候補木)として選抜します(成長調査:写真1、材質調査:写真2、選抜時の採穂:写真3)。候補木からクローン増殖のための枝(穂)を採取し、その穂を用いてさし木等により増殖した苗木を定植し、雄花着花性等を評価し、エリートツリーの基準を満たす系統がエリートツリーとして選抜されます。エリートツリーを選抜する時には、成長等の特性だけでなく、系統間の血縁関係にも考慮して、エリートツリーの遺伝的な多様性が高まるように配慮しています。令和3年度末現在、全国におけるエリートツリーの数は、スギで627系統、ヒノキで301系統、カラマツで122系統、トドマツで50系統の合計1,100系統となっています。そのなかで、林木育種センター育種部育種第二課(茨城県日立市)で担当している関東育種基本区におけるエリートツリーの数は、スギで142系統、ヒノキで42系統、カラマツで78系統の合計262系統です。これらのエリートツリーの中で特に成長が優れる等、特定母樹の指定基準を満たすものは、特定母樹に申請しています。

現在、全国でスギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツの第二世代のエリートツリーの選抜が進んでいます。さらに優良な種苗を生産するためには、国有林や都道府県等と連携しつつ、第三世代等のエリートツリーの開発を進める必要があります。そのため、第二世代エリートツリー等を交配親として人工交配を行って苗木を育成し、第三世代のエリートツリーを選抜するための育種集団林の造成を着実に進めていきたいと考えています。

(育種第二課)

 

写真1成長調査 写真2材質調査 写真3選抜時の採穂
写真1:成長調査 写真2:材質調査 写真3:選抜時の採穂
ウッドデザイン賞2022に「持続的な木材利用を支えるエリートツリー」が受賞しました
ウッドデザイン賞2022に「持続的な木材利用を支えるエリートツリー」が受賞しました

 

エリートツリーの選抜(PDF:845KB)

Adobe Acrobat Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要です。Adobe Acrobat Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

お問い合わせ

所属課室:森林総合研究所林木育種センター育種企画課 

〒319-1301 茨城県日立市十王町伊師3809-1

電話番号:0294-39-7002

FAX番号:0294-39-7306

Email:ikusyu@ffpri.affrc.go.jp