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令和5年3月8日
長野増殖保存園には、カラマツ第一世代精英樹のクローンを集めて植栽した育種素材保存園があります。この保存園は1960年に造成され、現在193系統910本が保存・管理されています。現在の樹齢は60年を超え平均樹高が25mと高くなったため、樹木の管理や育種の研究材料としての利用が難しくなってきました。そこで、保存木の若返りを図るため、昨年度からこれらの精英樹クローンの再増殖を順次進めています。
カラマツの再増殖はつぎ木により行います。採穂は樹木の休眠期(当園の場合2月頃)に行います。つぎ木に適した穂を採るためには測竿の先に鎌を付けた測竿鎌を使用しますが、今回は樹高が高く、枝が測竿鎌では届かない高さになっているため、ツリークライマーに依頼して採穂作業を行いました。(写真1)
昨年度は27系統30本、今年度は22系統26本から採穂しました。長野増殖保存園ではカラマツのつぎ木は袋つぎで行いますので、穂の太さが1~2mm、つぎ木時に削りやすい節間の長さがある、つぎ木に適する穂を採取する必要があります。(写真2)
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写真1 クライマーによる採穂 | 写真2 カラマツつぎ穂 |
このようなつぎ木に適した穂は光環境の良いところにあるため、クライマーには地上から20mほどの高さまで登って木の上から枝を落としてもらい、それらの枝の中から成長のよい充実した部位をつぎ穂として選びました。採穂したつぎ穂は系統名と必要本数を確認し、系統名をピンクテープ等に記入したのち系統ごとに袋詰めして、系統誤りのないように正確な系統管理を心がけました。
採穂をした穂は、つぎ木する台木が休眠から覚める時期(4月頃)になるまで貯蔵します。貯蔵するうえで重要となるのは穂の乾燥を防ぐことです。穂の切り口に殺菌剤を塗布し、あらかじめ水に浸しておいた水苔や新聞紙等で切り口を包み、ビニール袋で密閉し冷凍庫(-3℃)で保存します。穂木の水分が保たれることでつぎ木時の活着率が高くなります。(写真3)
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写真3 穂の貯蔵 |
今回、採穂・貯蔵した穂は今年4月につぎ木し、活着したつぎ木苗を各系統の新たな苗木として育成していきます。これらの苗木を再度園内に定植して新たな育種素材保存園を造成します。この新たな育種素材保存園は、採穂木仕立てとして、従来より樹高を低くすることにより、管理しやすい育種素材保存園としていく予定です。
(育種部 長野増殖保存園)
長野増殖保存園のカラマツ採穂作業について(PDF:640KB)