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令和5年6月28日
九州育種場では、原種苗木の生産・配布にあたって系統が確かな苗木を県や認定特定増殖事業者※1へ届けるため、全ての配布苗木のDNA分析を行って系統が正しいことを確認しています。DNA分析に基づいた系統管理のために、全ての苗木に異なる番号の個体識別ラベルをとりつけて、苗木から試料の採取を行い、DNAタイピング※2を行います。DNAタイピングは以下の工程からなり、試料の採取の工程までは、苗木の増殖・配布を担当している遺伝資源管理課が行い、試料からDNAを抽出する工程以降を育種課が行っています。
まず、1個体ずつ試料を採取します(写真1)。DNAは生体のどの器官においても全く同じなのですが、試料には新芽を用いています。その理由は、①DNAを抽出しやすく、純度の高いDNAが得られやすい、②試料の量を調整しやすい(多すぎても少なすぎても適さない)、③採取しやすい(プチっと手で取れる)といった利点があるためです。
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| (写真1) | |
次に、採取した試料から試薬を使ってDNAを抽出します(写真2)。DNA抽出は、①物理的破砕、②細胞膜の破壊(DNAの溶解)、③DNA以外の夾雑物(きょうざつぶつ)の除去(高純度なDNAの回収)の工程から成ります。ちなみに、細胞膜の破壊は界面活性剤が、夾雑物の除去は塩(えん)とエタノールがあればできるので、純度は低くなってしまうものの、DNA抽出そのものは各家庭でも行うことができます。
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| (写真2) |
さらに、抽出したDNAを用いてPCR反応を行います(写真3)。PCR反応により、抽出したDNAの特定の部分だけを大量に増やすことができます。系統ごとに違いがあることがあらかじめわかっている部分をPCR反応で増幅します。このように、系統ごとに違いがある部分を増幅することで、その違いを分析により明らかにしやすくなります(抽出したままの状態のDNA量(濃度)は微量であるため、そのままでは違いをうまく検出することができません)。PCR反応は、DNAの二重らせん構造が温度によって分離したり結合したりする特性を利用することにより、任意の目的部分のみを増幅させることのできる手法で、その原理は新型コロナウイルスを検出するための分析にも用いられています。
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| (写真3) |
最後に、シーケンサーと呼ばれる機器を使って、PCR反応で増幅した部分の違いを分析します。このようにして得られた分析結果から、試料を採取した個体の系統を確定することができます。
上記のようなDNAタイピングを行うことによって、全ての配布苗木について系統が正しいことを確認しているところですが、その一方で、育種の作業の過程で、そもそも系統を取り違える等の人為的ミスを起こさないようにすることがまずは重要だと考えています。そのため、九州育種場ではそうしたミスを減らす・なくすための取り組みについても実施しています。
(九州育種場)
※1 平成25年に改正された間伐等特措法により、特定母樹※3の増殖を行う県知事が認定した民間事業者。
※2 遺伝子型を調べること。ジェノタイピング(genotyping)とも言う。遺伝子型は系統により固有であるため、遺伝子型を調べることによって、各個体が本当に目的の系統であるかを確認することができる。
※3 間伐等特措法により森林のCO2の吸収能力を高めるため、農林水産大臣が特に成長に優れた樹木と指定したもの。
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