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令和7年1月24日
林木遺伝子銀行110番(以下、「110番」)は、衰弱して失われる危険性が高い天然記念物、名木や巨樹などを対象に、「さし木」や「つぎ木」などのクローン増殖技術で全く同じ遺伝子を受け継いだ後継苗木を育成して保存するとともに、現地に里帰りさせる業務です。
筆者(以下「私」)は、2024年4月に新規採用され、探索収集課の遺伝資源収集係に配属されました。ここでは、私が初めて体験したつぎ木について紹介します。
つぎ木は、二つの植物(穂木と台木)の形成層と呼ばれる組織同士を接合させることで、クローン苗を増殖する方法です。つぎ木にはいくつかの方法がありますが、割つぎという方法では、穂木をつぎ木ナイフでくさび状に切り出し(写真1)、台木の主軸に切り込みを入れ、形成層がきちんと合うように接合します。人間の外科手術と同じようによく手入れされた清潔な道具を使用して、迅速かつ丁寧に作業する必要があります。切れ味が悪くなったつぎ木ナイフを使うと穂木と台木の切断面が粗くなり、隙間ができてしまいます。また形成層を正確に合わせないといけないのですが、慎重になりすぎて時間をかけすぎると接合面が乾燥してしまいます。接合した後は、人間が骨折した時ギブスで固定するように、形成層がズレないようにつぎ木テープで固定しますが、穂木が動かないようにうまく固定するのがとても難しいのです。切断や接合、固定の作業全てを正確、丁寧かつ迅速に行わなければつぎ木は成功しません。
接合の作業が終わったからといって安心できるわけではありません。接合した形成層はすぐに癒合するわけではないので、しっかり癒合するまで経過を観察しながら適切な環境下で管理します。この工程では、接合部と穂木の乾燥を防止するために透明なビニール袋を被せます(写真2)。その上下には過湿による蒸れや結露の発生を防ぐ開口部を作ります。また、日覆いとして寒冷紗という布を使い、その枚数を変えて日照の強さを調節します(写真3)。このビニール袋と寒冷紗は取り外す時期を見極めることがとても重要です。適期から一週間程度前後するだけで環境の変化に耐えきれず苗木が枯れてしまう可能性があります。110番で依頼される樹種は様々で、取り外しの時期は樹種によっても異なります。適期を見極めるためには毎日の観察がとても重要です。
私は苦戦しながらつぎ木したのですが、初めての経験ということもあり、納得のゆく結果ではありませんでした。生き残った苗木は先輩方の苗木といっしょに、適切な管理ができるよう毎日観察をしています。
高い技術を必要とするつぎ木ですが、地域に親しまれてきた樹木の後継苗木を里帰りさせて人々に笑顔を届けられるように、そして貴重な樹木の遺伝子が未来に受け継がれるように、私も技術の向上に努めたいと思います。
(遺伝資源部 探索収集課)
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1.つぎ木用ナイフで穂木(矢印)をくさび状に切り出す。 2.乾燥防止のために接合部に袋を被せる。 3.寒冷紗(矢印)で覆って直射日光で苗木が高温にならないように調節する。 |
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貴重な樹木の後継樹を育てる仕事―林木遺伝子銀行110番―(PDF:629KB)
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