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令和8年5月26日
日本各地には、神社や学校をはじめとする地域の身近な場所に、天然記念物や巨樹・名木といった貴重な樹木が数多く残されています。これらは、長い年月の中で風雪や病虫害など厳しい自然条件を乗り越えてきた、かけがえのない林木遺伝資源です。一方で、樹齢の高齢化や病気の進行により、衰弱や枯損の危機に直面している樹木も少なくありません。
林木育種センターでは、平成15年から「林木遺伝子銀行110番」の取り組みを開始しました。本事業は、各地の巨樹・名木から遺伝資源を採取・保存し、さし木やつぎ木によって同一の遺伝子を受け継ぐクローン苗を育成し、再び元の地へ戻すものです。令和7年度、関西育種場では3件の里帰りを実施しましたので、その概要をご紹介します。
兵庫県宍粟市に鎮座する御形神社のショウフクジザクラは、県下最大級といわれる貴重な一本で、平成12年に宍粟市の天然記念物に指定されています。ショウフクジザクラは植物学者牧野富太郎により命名された兵庫県固有の桜で、但馬地方から播磨北部にかけて分布する希少種です。八重咲きの華やかな花を咲かせ、半しだれ状に枝を広げる姿は、古くから地域の人々に親しまれてきました。
しかし、平成12年の天然記念物指定以降、徐々に樹勢の衰えが見られるようになりました。平成26年度には白紋羽病に罹患し薬剤治療を実施、さらに令和3年度にはコケの繁茂やシロアリ被害も確認され、樹木医の指導のもと殺菌・駆除などの対策が講じられました。将来的な枯死に備え、林木遺伝子銀行110番の活用が提案され、令和4年1月26日に穂木を採取し、同年3月25日、ヤマザクラを台木としてつぎ木を行いました。育成を重ねた苗木は、令和7年11月23日の新嘗祭にあわせて御形神社へ里帰りし、地域の宝を未来へとつなぐ新たな一歩となりました(写真1)。
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| 写真1「御形神社のショウフクジザクラ」 |
| 新嘗祭及び後継樹苗木の譲渡 |
京都市東山区に位置する知恩院は、約7万坪の広大な境内に国宝や重要文化財を有する浄土宗総本山です。徳川家ゆかりの寺院として知られ、堂宇の多くは徳川家の建立・再建によるもので、家紋「三つ葉葵」が用いられるなど深い結びつきを今に伝えています。
この知恩院方丈庭園にある「徳川家光公お手植え松(三代目)」の樹勢衰退を受け、関西育種場へ増殖の相談が寄せられました。現地調査の結果、衰えが確認され、令和2年10月に正式な申請を受理しました。令和3年2月、採取された枝をもとに増殖を行い、育成された後継樹は令和8年2月3日に里帰りしました(写真2)。歴史とともに歩んできた名松の系譜が、次世代へと受け継がれます。
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写真2「徳川家光公お手植え松(三代目)」後継樹苗木の譲渡 |
高知県津野町にある津野町立葉山小学校のセンダンは、津野町指定天然記念物であり、学校のシンボルツリーとして親しまれてきました。かつて校庭には2本の大きなセンダンがありましたが、そのうち1本は枯れてしまい、残る1本も幹に大きな洞が生じ、内部の空洞化が懸念されていました。
令和3年1月に現況確認を行い、同年9月に校長先生から後継樹育成の申請がされました。令和4年2月頃に穂木を採取し、つぎ木による増殖を行いました。育成期間を経て、令和8年3月に後継樹が里帰りしました(写真3)。子どもたちを見守り続けてきたセンダンの命は、新たな苗木へと受け継がれ、これからも学校の歴史をともに刻んでいきます。
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| 写真3「葉山小学校のセンダン」後継樹苗木の譲渡 |
「林木遺伝子銀行110番」の取り組みは、地域に根ざした巨樹・名木の遺伝資源を守り、文化や歴史とともに次世代へ継承する活動です。後継樹の里帰りは、単なる植樹ではなく、地域の誇りと記憶を未来へ手渡す象徴的な取り組みといえます。今後も各地の貴重な樹木を守り続けることで、人と自然が共生する社会の実現に貢献してまいります。
(関西育種場)
未来へつなぐ林木遺伝資源「林木遺伝子銀行110番」(PDF:496KB)
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