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トドマツオオアブラムシ
Cinara todocola INOUYE
- 体長 無翅胎生雌虫 :約2.8mm 有翅胎生雌虫:約3.4mm
- 被害 幼虫,成虫が幹枝に口吻をさして吸汁することによる。通常,植栽2~3年で侵入寄生が始まり,樹高が2m前後になるまで続き,被害が甚大な場合枯死する。
- 生活史 年5~6世代。卵で越冬。5月上旬にふ化する。これを幹母といい,第1世代である。6月上旬に第2世代を胎生によって産む。第2世代に有翅型が現われ,これによって寄生が拡大される。以後,夏の期間は2~3世代経するが,ほとんどが無翅である。幹母からここまではすべて雌のみで,胎生であるが,9月上旬の最終世代は有翅の雄虫と無翅の雌虫が現われて交尾をして卵をうむ。
共生アリはトビイロケアリが多く,他に5種程度のアリがあげられる。アリ類は土莢をつくりアブラムシを保護する。
- トドマツに寄生する他のアブラムシとして,ハネナガオオアブラムシ外2種がある。
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トドマツオオアブラムシ
無翅胎生雌虫 |
トドマツ針葉上の越冬卵 |
エゾマツオオアブラムシ
Cinara bogdanowi ezoana INOUYE
- 体長 無翅胎生雌虫 :約2.5mm 有翅胎生雌虫:約2.8mm
- 加害樹種 エゾマツ ,アカエゾマツ,その他のトウヒ類
- 被害 トドマツオオアブラムシのように枯死させるといった甚大な被害は与えないが,生長への影響はみられる。
- 生活史 年5~6世代。卵で越冬。5月上旬にふ化する。第1世代(幹母)から生まれた第2世代では有翅型が大部分を占めており,6月中・下旬から7月上旬にかけて広く分散する。6月下旬から第3世代があらわれ,以後夏の間2~3世代を経過する。ここまでは雌のみの胎生単性生殖であるが,8月下旬に現われる最終世代では雄虫と雌虫(ともに無翅)が現われ,交尾して産卵する。産卵が始まるのは10月中旬頃からである。
共生アリはトドマツオオアブラムシとほぼ同様でトビイロケアリを中心に4種類ほどがいる。
- 工ゾマツに寄生するオオアブラムシ類はこのアブラムシの外にコナフキトビイロオオアブラムシ外2種いる。
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エゾマツオオアブラムシ
の無翅胎生雌虫 |
有翅雌成虫(6月) |
クリオオアブラムシ
Lachnus tropicalis(van der GOOT)
- 体長 無翅胎生雌虫:約3mm 有翅胎生雌虫 :約4mm
- 被害 幼虫,成虫が幹や枝に口吻をさして吸汁することによる。寄生が多いと枝の枯れ等がある。
- 生活史 年に数世代。卵で越冬。4月下旬~5月上旬にふ化し,5月末に成虫になる。以後胎生によって数世代くりかえす。6月下旬には有翅胎生雌虫が現われ,分散する。10月上旬に無翅の雌虫と有翅の雄虫が現われ,10月末に交尾後幹や枝に多数の卵を産む。卵は秋には赤褐色をしているが,越冬後の春には黒くなる。
共生アリとしてトビイロケアリ,アカヤマアリ,クロクサアリなどがみられるがほとんど土莢はつくらない。
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クリオオアブラムシの
無翅胎生雌虫 |
有翅雌虫(6月) |
ミズナラの樹幹に産まれた越冬卵 |
エゾマツカサアブラムシ
Adelges japonicus MONZEN
- 分類 半翅目 カサアブラムシ科 Adelgidae
- 加害樹種 エゾマツ,その他のトウヒ類(従来アカエゾマツにも寄生するとされていたが,筆者らは観察していない)
- 被害 新芽の全体もしくは一部が虫えいとなる。一部が虫えいとなった新梢でも翌年に枯れるものが多い。この被害のみで樹木が枯死する例は少ない。
- 生活史 年2世代。幼虫で越冬。越冬してきた幼虫は4月末に無翅の雌成虫になり新芽の基部に産卵する。5月中,下旬にふ化した幼虫は近くの新芽の針葉間にもぐりこむ。この寄生された芽はまつかさ状に肥大し虫えいとなる。虫えい内には鱗片につき1つの幼虫室がある。1つの幼虫室には数頭の幼虫がいる。8月に幼虫室は開孔を始め,外にでた蛹は脱皮して有翅の雌となる。8月に出現した有翅虫はほとんどが分散移動するが,9月中旬以後に出現したものは分散せず,近くの針葉上に集団で産卵する。ふ化した幼虫は冬芽の基部にしっかりと付着して越冬に入る。
ヒメカサアブラムシ
Aphrastasia pectinatae (CHOLODKOVSKY)
- 分類 半翅目 カサアブラムシ科 Adelgidae
- 加害樹種 エゾマツ ,アカエゾマツ,トウヒ類,トドマツ
- 被害 エゾマツ類では虫えい, トドマツ では葉面吸汁
- 生活史 エゾマツ,トドマツで寄主転換を行い,年2,3世代。幼虫で越冬。エゾマツ類で越冬した幼虫は4月下旬に無翅成虫となり,単性で新芽の基部に産卵する。ふ化した幼虫は新芽内に入り虫えいをつくる。6月中・下旬に虫えいが開孔し,有翅雌虫となり,トドマツに移動して葉裏に産卵する。ふ化した幼虫は他の葉裏に移り越冬する。次の年,4~5月に無翅成虫となり,単性で産卵する。ふ化した幼虫は2つに分かれる。一部は有翅雌虫となりエゾマツ類に移動し産卵する。これから無翅の雌,雄虫が生じ,交尾して産卵,ふ化した幼虫が越冬し,次の年虫えいをつくる。他の一部は無翅の雌虫となりトドマツ上で2世代を経過する。
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虫えい |
虫えいから出てトドマツ上に移って産卵中の有翅雌虫 |
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トドマツの被害 |
後に虫えいとなるエゾマツの芽の基部に産まれた卵(5月) |
カラマツカサアブラムシ
Adelges laricis VALLOT
英名 Woolly larch aphid
- 分類 半翅目 カサアブラムシ科 Adelgidae
- 被害 葉からの吸汁による。しかし生長に対する影響は小さいものとみられる。
- 生活史 (詳細は調べられていない)年2~3世代。幼虫で越冬。本来エゾマツ等を第1次寄主(虫えいを形成する),カラマツ類を第2次寄主としてヒメカサアブラムシのような寄主転換を行っていたものと考えられている。しかし,虫えいを形成する部分は確認されていない。カラマツの枝等で越冬した幼虫は,4月末~5月上旬に無翅雌成虫となり単性で産卵,その子虫は2つの型に分かれる。一部は有翅雌虫になりエゾマツに移動し,針葉上で産卵するが,ふ化幼虫は発育できずに死滅するといわれている。残りの部分は親と同様に無翅の雌虫となり,カラマツ上で産卵,ふ化した幼虫は,そのまま,あるいはもう一世代経過して越冬に入る。
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カラマツ針葉上に寄生して,
白色蝋物質におおわれたカラ
マツカサアブラムシの成虫 |
カラマツカサアブラムシの幼虫 |
カラマツカサアブラ
ムシの卵 |
トドノネオオワタムシ
Prociphilus oriens MORDVILKO
- 分類 半翅目 タマワタムシ科 Pemphigidae
- 被害 ヤチダモの害虫であるとともに,トドマツの害虫でもある。ヤチダモでは葉もしくは枝の吸汁による。トドマツでは土中の幹部および根の吸汁による。
- 生活史 年5~6世代。卵で越冬。ヤチダモ等で4月中旬~5月上旬にふ化した幼虫は幹母となり,第2世代までヤチダモ等の枝,葉に寄生し偽虫えいをつくる。第2世代はすべて有翅で6月下旬~7月上旬,ヤチダモ等からトドマツに移住し,根,地際幹部で,2~3世代を経過する。10月上・中旬になると,有翅の産性虫が現われ,トドマツから,ヤチダモ等に移り,有性虫を胎生する。この有性虫には雄虫と雌虫があり,交尾をして樹皮下,割目等に越冬卵を産む。トドマツからヤチダモ等に移動する産性虫は雪虫とよばれる。
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トドマツに寄生した
トドノネオオワタ
ムシの無翅胎生虫 |
トドノネオオワタムシ
の産性虫(雪虫) |
トドノネオオワタムシの越冬卵 |
トドワタムシ
(別名 マツワタアブラムシ,マツワタムシ〉
Mindarus japonicus TAKAHASHI
- 被害 針葉の基部に寄生し吸汁する。新葉がねじれたりわん曲したりする。被害木が枯死することはない。
- 生活史 年3世代。卵で越冬。4~5月にふ化した幼虫は3回脱皮して成熟幹母となる。幹母はすべて無翅,開葉間もないトドマツ新梢の針葉基部附近に寄生している。幹母は単性で子虫を胎生する。これは4回脱皮をして有翅の胎生雌虫(産性虫)となり,分散する。産性虫は単性胎生で第3世代の子を産む。第3世代は無翅の雌虫と雄虫になり,6月に交尾して産卵し,この卵で夏を経て越冬にはいる。
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トドワタムシの被害をうけた
トドマツの新梢(新葉がまが
って,すぼんだようになる) |
トドワタムシの幼虫 |
トドワタムシの有翅成虫
(6月) |
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