広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

・秋田県森林技術センター(機関ホームページ

抜き伐りすると地表面はどうなるのか? 

─スギ林の下層植生と土砂移動─


近年、長引く材価の低迷や森林所有者の高齢化などにより、人手をかけることのできないスギ人工林が増加しています。こうした森林は、林内に光が入らないため下草が少なくなり、表土の侵食や土砂の流出など公益的機能の低下が心配されています。一方、放置されたスギ人工林は、「抜き伐り」という作業によって、地表を覆う植物量の回復や様々な種類の広葉樹を呼び込むことが知られています。しかし、広葉樹林化に伴い、森林のもつ水や土を保全する機能が向上するのかについては、これまでよく調べられておりませんでした。また、抜き伐りは地表を攪乱する行為でもあり、一時的に不安定化した土砂が生産されます。この移動量が植生の回復過程とどのような関係にあるのかについてもよくわかっていないのが現状です。

 そこで、約40年生のスギ人工林(長坂試験地:秋田県大館市)において、抜き伐り処理の有無によって、植生や土砂移動量がどのように変化するのか調べてみました。抜き伐り後2年目の結果として、林床植生については予測したとおり被覆率の増加が見られ、広葉樹の定着も促進される傾向が認められました。一方、土砂移動量は抜き伐りに伴って増加しており、搬出等の作業の影響がまだ残っているものと考えられます。今後、広葉樹林化の促進により土砂移動防止機能がどの様に発揮されるのか、明らかにしていく予定です。


上:写真1 スギを本数率50%抜き伐りした長坂試験地(秋田県大館市)

中:写真2 抜き伐り後の林床植生の回復状況

下:写真3 土砂受箱による土砂移動量の観測