シイやカシはどのくらい光合成をするのか?
─常緑広葉樹林の稚幼樹の光に対する生理生態的特性の解明─
目的
植物は太陽の光エネルギーを利用して光合成を行って成長します。光の乏しいところでは成長が抑えられ、時として死んでしまいます。森林では、光が乏しい暗い地表面(林床)に樹木の実生(みしょう、種子から芽生えたばかりの幼樹)が発生します。特に、西日本に広がる常緑広葉樹林の林床は一年中暗く、実生や稚樹が健全に成長するのは困難です。暗すぎると成長できない一方で、大きな木が枯死したり伐採されたりして、急に林床に強い光が射し込むと実生や稚樹の葉の葉緑体は壊れて、光合成活性が低下します(強光阻害)。最悪の場合には細胞が壊れて葉が枯れてしまいます。どのくらいの暗さの元で植物は育つことができるのか、また、急激に強い光を受けた時にどのくらい強光阻害を受けるのか、ということはこれまで常緑広葉樹ではあまり調べられていませんでした。そこで、常緑樹各種について人工的にいろいろな光環境の元で栽培し、どのくらい光合成を行い、どのくらい成長するか、強光阻害の程度はどのくらいで回復できるのか、というような植物生理的な特性を明らかにしていきます。このような光に対する樹種特性が解明されれば、林床の若い樹木を育てるために、どのように大きな木を伐ればよいか等の作業方法を決めることが出来ます。
左:被陰ネットで明るさを調節した環境で植物を栽培します。
温湿度と光センサーを置いて、環境を常にモニターします。
右:携帯用ガス交換測定装置で光合成速度を測定します。
下:暗いところで育てた植物を急に明るいところに移すと、葉がダメージを受けます。


これまでの成果
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