広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

・森林総合研究所四国支所(機関ホームページ

どんな人工林が広葉樹林にみちびきやすいのか?

これまでに得られた結果から、広葉樹の前生稚樹の数にはひとつの人工林の中でも場所によって大きなばらつきがあり(写真1)、ヒノキのサイズ(平均直径・樹高)が大きい調査区では広葉樹の前生稚樹の密度が低い傾向がみられました。抜き伐りの翌年に広葉樹の実生を調べたところ、抜き伐りを行なった調査区では、行なっていない調査区と比べて多くの実生が発生しました。発生した実生と埋土種子・散布種子の樹種の構成を比較したところ、実生を構成する樹種は埋土種子に含まれる樹種と共通性が高いことが分かりました。しかし、埋土種子に含まれる樹種には、アカメガシワ(写真2)など成長が早くて寿命の短い樹種が多く、安定した広葉樹林を形成する樹種はほとんど含まれていませんでした。

これらのことから考える限り、四国のヒノキ林では、抜き伐りの直後に埋土種子から発生する実生については、天然更新への貢献を期待するのは難しいようです。また、前生稚樹の量には調査区間で大きなばらつきがみられたことから、前生稚樹を利用した更新を行なう際にも、場所をきめ細かく選ぶなど、慎重な配慮が必要になると思われます。  

さらに、今後、抜き伐りによって前生稚樹や実生の成長や生存が十分促進されるかどうかを明らかにしていく必要があります。そのため、広葉樹の稚樹や実生の観測を継続して行なっていく予定です。





上:写真1 ヒノキ人工林の林床の様子

左写真の調査区には広葉樹など豊富な下層植生がみられるが、右写真の調査区にはほとんどみられない。




下:写真2 埋土種子から発芽したアカメガシワの実生