広葉樹林は土砂崩れを防げるのか?
─土砂受箱による土砂移動量調査─
広葉樹林化では、森林の公益的機能が高まることが期待されます。しかし、森林の公益的機能は、イメージとしては理解できるのですが、それを具体的なデータで表そうとするとなかなか難しいようです。
森林内のある地点において土壌浸食の発生を抑制し、土壌が安定している状態を維持することは、森林の公益的機能を維持するための土台といえます。そこで、広葉樹林化による林床植生の発達が、森林の公益的機能である「表土保全機能」に如何に関与するかを調べる目的で、抜き切り実施林分と実施しない林分において、土砂の移動量と林床植生の関係について調査します。
土砂の移動量の測定には土砂受箱を用います。土砂受箱は、25 cm程度の枠の背面を布などで覆ったもので、林内に等高線に沿って数個設置します。土砂受箱の中に溜まった堆積物は定期的に回収し、「細土(粒径2 mm以下の鉱物・有機物)」、「礫(粒径2 mm以上の鉱物)」、「リター(粒径2 mm以上の有機物)」に分類した後、それぞれの乾燥重量を測定します。
林床の植生調査は、ポイントカウンティング法により行ないます。ポイントカウンティング法は、土砂受箱の前面に、5 cmメッシュに切った50 cm×50 cmの枠を置き、メッシュの交点部分について「細土」、「礫」、「植生」、「リター」に分類し、林床の被覆状況を評価します。
これらの調査から、植生の割合が多い林床ほど土砂受箱に溜まる土砂の量が少なく、林床が植生で被覆されることにより、林内の土砂侵食の発生を抑制する効果があると考えられます。

土砂受箱による土砂移動量の観測

ポイントカウンティング法による林床被覆の調査

林床の被覆状況

土砂受け箱の堆積物の内容
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