ケヤキの木肌と樹形 This content is Japanese page only. 1999/06/24作文。2002/12/20撮影。2002/12/27作成。文責:軽部正彦

季節の話題

土地に合った木と木材「遠ざかってしまったケヤキ」

関東平野、特に武蔵野から茨城にかけては、旧家の屋敷の中に必ずケヤキの大木があった。ケヤキは落葉広葉樹で樹形が美しく、大きく育つばかりか、木材としては硬くて強度が高く、それでいて木目が美しい。旧家では代々屋敷の中でケヤキを育て、建物の築造時に大黒柱や梁桁として使ったり、餅搗きの臼にしたりと、家を守る屋敷森として以外に、用材としての目的もあった。関東の古い商家や民家には、すぐ近くで大きく育つケヤキを使って建物の骨組を作っているものが多い。硬くて強度が高いケヤキは構造材として適しているばかりか、そのまま美しい仕上げ材料でもある。また長い時間を経るうちに、表面に独特の艶を帯びてくるので、古いものほど味わい深いものである。

現在でも旧道沿いの旧い屋並を見ていくと、その中に旧家の庭先で大きく育つケヤキを見かけることができるが、徐々にその数は減ってきている。大きく育つ樹形は今日では日照問題を引き起こし、大風や大雪時の枝折れや倒木の心配から疎んじられ、毎年の大量の落葉は肥料として重宝された時代は遠く昔、雨樋を詰まらせ建物を傷める厄介な存在としてしか見られなくなった。

こんな時代に合わなくなったケヤキの大木であるが、四季折々に変わっていく落葉広葉樹の表情はとても美しく、また美しい樹形はその存在感とともに心の安らぎを感じさせてくれる。もともと関東の地に自生する樹であるので、公園の埴栽の中でひときわ目立つ存在として大きく育っているのを見つけることが出来る。

ケヤキとともに在った自然と調和して暮らしていた時代は、現代の近視眼的な合理性には合わないが、環境負荷や物質サイクルの点で非常に合理的であることを気付かせてくれる。

1999/06/24 軽部正彦


森林総合研究所正面玄関前の寄せ植え 森林総合研究所本所内の並木 森林総合研究所玄関ホール ケヤキ材の表面と杢

ケヤキ(Keyaki) Zelkova serrataMakino,
天然分布は我が国では本州、四国、九州の温帯から暖帯であるが、屋敷林の主要な樹の一つであるほか、庭園樹、公園樹、街路樹として、各地に広く植栽されている。寿命が長く、樹齢1,000年以上のものもあるといわれ、樹高35m、(正面玄関設置案内板より転載)


2002/10/23付 季節の話題「木材の耐久性」 / エコマテリアル

季節の話題の変遷
Masahiko KARUBE, Ph.D.
Laboratory of Engineered Timber and Joints
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