伝統木造架構の復元力特性に関する研究(一部工事中)

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共同研究
財団法人 文化財建造物保存技術協会
森林総合研究所木材利用部構造利用科 接合研究室

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研究の目的と位置づけ

古来より、寺社・寺院等の木造建築物では、柱・斗組が 軸部に使われてきた。伝統的な木造架構は、近代的なトラスラーメン等の構造形式と異なって力学的挙動について 未解明の部分が多いにもかかわらず、地震や台風等の自然災害にも耐えて長い年月にわたって 存続してきていることも事実である。
本研究においては、伝統的な木造架構の実大架構模型を用いて、地震時水平力に対する柱の 傾斜復元力特性を解明するとともに、 斗組および 通肘木の回転剛性への寄与や、継手部の 補強金物の有効性を検証することを目的として いる。

寺社建築等に代表される伝統木造架構の耐震・耐風特性は、 古来の木造伝統構法による架構の水平抵抗特性に関する研究として 戦前に行われており、その中で鉛直荷重を受ける木造架構の水平耐力と水平変位量との関係が 柱の傾斜に伴う復原力「傾斜復元力」という観点から 論じられている。奈良時代以前の木造建築では柱の 傾斜復元力が建物全体の復原力の重要な要素であり、 伝統的架構の耐震性の要と考えられる。その傾斜復元力 による建物の水平抵抗特性を把握することは、伝統木造架構の耐震性を検討する上で不可欠で あり、そのためには実大の試験体を用いた載荷実験を行うのが望ましい。

本研究は、実際の建物の模型を実大で作製し、上部構造や積載荷重に相当する鉛直荷重を与え、 その上で水平方向に変位制御加力することによって、構造物がどのぐらいの水平抵抗力を 持っているかを測定し、伝統架構の耐震性についての検討資料としようとするものである。
実際の伝統架構では、柱や頭貫による軸組部分の他に、 肘木による 斗組部分 を有しており伝統木造架構全体の構造特性を把握するためには、軸組み部分の挙動はもちろん、 斗組部分の挙動も調べておく必要がある。
そのため本実験では、斗組部分の挙動や水平抵抗力など を調べる「斗組架構実験」と、 斗組下部と軸組部分の挙動や特性を調べる 「実大架構実験」の2つの実験を行い、それらの結果を重合して 伝統木造架構の耐震性を明らかにして行こうと言うものである。

実大架構実験の概要

試験体は複層の伝統架構の初重柱4本からなる1層1スパンの実大立体架構で、柱の 傾斜復元力特性の検討を目的としている。伝統木造 架構の中で試験体を抜き出した位置は側通り架構の一部分で、桁行方向を水平加力方向としている。 桁行方向スパンは5022mm、妻行方向スパン4431mm、初重柱高さを5317mmとしている。柱は 礎石の中央に ダボを入れ、そこに直接設置している。試験体の 斗組は、柱への水平力導入条件を現実に合わせるために 1段としている。試験体の材料は、全て国内 吉野産の を用いている。

加力は通肘木上にピンを介して設置した冶具を、反力床に固定した別の冶具から伸びるPC鋼棒 で結び、そのPC鋼棒をオイルジャッキによって引き下げて、上部架構・積載荷重に相当する 鉛直力を柱軸線上に加える。その一方で、試験体を囲む水平加力冶具に通肘木の端部を繋ぎ、 その水平加力冶具を反力壁から伸びる2本のオイルジャッキで押し引きすることで水平力を 与えている。

試験体平面図立面図
加力装置平面図立面図
定点観測定点観測その2
写真アルバム
実験のスナップ

斗組架構実験の概要

試験体は伝統架構初重柱の上に載る斗組の桁行方向 1スパン分を取り出した実大スケールのものである。試験体は下から、 大斗方斗肘木巻斗通肘木から構成され、2段ある 通肘木の間には 間斗束が配置されている。 全長は7972mm、幅2360mm、高さ2006mmである。 スパン(大斗の中心間距離)は5022mmで、実大架構実験の 桁行方向スパンに合わせてある。2つの大斗は水平力が 作用したときに滑りや浮き上がりを生じないように床に冶具を介して緊結されている。試験体に 使用した材料は、大斗のみが 米栂、他の部分は全て国内 吉野産の である。

試験体平面図立面図
加力装置平面図立面図
実験写真:試験体組立加力装置組立試験体組立の様子
定点観測:試験体組立加力装置組立
写真アルバム
実験のスナップ

参考文献

坂静雄「社寺骨組の力学的研究(第1部 柱の安定復原力)」日本建築学会大会論文集, 昭和16年4月, pp.252-258

公開実験が行われました。

農林水産省 林野庁 森林総合研究所 内 木質構造第2実験棟
公開日:平成9年3月10日・11日
両日とも、午後1時半より実験棟にて説明、その後実験・試験体観察、3時前後に終了。

このページは、 軽部正彦 が、 Microsoft Internet Explorer にあわせて1997/03/13に作成しました。