(研究資料)
アカシア類水俣試験地・長崎試験地の樹形を中心とした実態の解析
飯盛 功・尾方信夫・上中作次郎
「合理的短期育成林業技術の確立に関する試験」の一環として,九州ではモリシマアカシア,フサアカシアの試験地が6か所に設定され,それぞれ2,000本/haと4,000本/haと密度をかえて植栽された。しかし,それらの大部分は,台風による倒伏や寒害または原因不明の立枯れなどにより,立木本数が激減し,長崎のフサアカシア試験地,水俣の両試験地以外は,すでに試験地として廃止されている。この報告は,これらの残存試験地を,植栽後9〜12年目に調査した結果をとりまとめたものである。(1)樹高成長は,水俣のモリシマアカシア・長崎のフサアカシアでは収穫予想の値とほぼ同等であるが,水俣のフサアカシアはかなり低い値を示している。(2)樹形を分類するのに,元口直径5cm以上の枝の有無,有のばあいには,それが1本だけか2本以上か,またその分岐高が2m以上か以下かということを基準とし,5型に区分した。(3)大きな分岐枝のないI型は,全般に密度の高い試験区に多いが,モリシマアカシアの2,000本/ha区と4,000本/ha区の間には差がない。これは,間伐と枝打ちがおこなわれたためと思える。モリシマアカシアの10,000本/ha区では,この型の比率はあきらかに高い。(4)樹形を直径階別にみると,単木の太枝の多いものほど,単木の胸高直径は大きい傾向があきらかである。(5)只木によって,モリシマアカシアの斡材積式と幹材積表が既に作製されているが,フサアカシアのばあいにそれが適合しなかったので,新しくフサアカシアの幹材積式と幹材積表を作製した。また,モリシマアカシア林の林分密度管理図があるが,フサアカシアのデータに対して,適合度の検定をおこなったが適合しなかったので新しく,フサアカシア林の林分密度管理図を作製する必要があると考えられる。
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