斜面ライシメーターにおける植被別水収支の研究

 近嵐弘栄・服部重昭・竹内信治

要旨

 斜面ライシメーターに,裸地区,草本区,灌木区を設けて,植被条件の相違が降雨の流出,蒸発散,土壌水分変化等に及ぼす影響を試験した。
 植被の相違により,水収支に顕著な相違が生じ,511月の暖候期の総流出量,直接流出量,最大1時間流出量は,裸地区が最も大きく,次いで草本区,灌木区の順であった。
 しかし,冬期間(122月)については,暖候期と異なり,いずれの流出量も灌木区が最も大きく,草本区,裸地区の順に小さくなった。
 暖候期の蒸発散量は,裸地区1に対して,草本区1.6,灌木区2.9の比となり,冬期には区間の差は小さいが順位は暖侯期の逆になった。ソーンスウェイト式による蒸発散能に対して,灌木区の蒸発散量は108%,草本区70%,裸地区57%に相当した。年間土壊水分は,灌木区が最も少なく,草本区,裸地区の順であり,生育期の降雨停止後の土壊水分減少割合は,裸地区が最も小さく草本区,灌木区の順で,休眠期には差がなかった。蒸発散による土壌水分減少は,根系分布に符合して,上層土層で多く,下層で少なかった。
 土壌水分変化と,蒸発散強度から,浸透流出量を推定する方法が提案された。

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