自殖可能度および交雑可能度の表わし方

山本千秋

   要旨

 自家受粉あるいは種間受粉を行ったときのタネや苗木の得られや すさの程度を表わす用語として,自殖可能度あるいは交雑可能度ということばが用いられているが,そ の意味内容は不統一で,はっきりした定義が与えられていない。
 そこで,自殖可能度および交雑可能度に関する既往の文献を概観し,さらに,自殖や種間交雑の阻害 機構とその具体的な発現態様を検討したうえで,両可能度の概念を明確にすることを試みた。
 そして,自殖可能度および交雑可能度は,自家受粉および種間受粉を行ったときの,種内他家受粉の 場合に対する次代植物の得られやすさの相対的な度合いを表わす総合的数量指標として用いるのがもっ とも適切であり,両可能度の推定にあたっては,結果率,球果あたりのタネ数,充実率,真正発芽率お よび成苗率の5形質のいずれをも見おとすべきではない,と考えた。

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