スギの着花特性およびその遺伝に関する研究

斎藤武史,河崎久男

   要旨

 ジベレリン処理を行ったスギ精英樹クローンの着花量および着花部 位を調べた。雌雄両花の着花量,着花部位はクローン間で差が認められた。着花量は雌雄両花ともジ ベレリンの7月処理で多く,6月処理では雄花が着きやすい傾向があった。一次枝の先端を基点とし二 次枝分岐点までの距離を尺度とした着花部位では,雌花は枝先端,雄花は枝基部に多く,ジベレリン処 理時期の違いによる位置の変動が比較的少なかった。稚樹の例では,樹高が高いほど,また当年伸長 量が大きいほど,着花部位が相対的に下がる相関関係があった。しかし,この相関が高い生長形質の 組合せや,その相関の大きさの程度はクローンによって違っていた。
 雄親が共通の4組のF1家系とそれらの親クローンとを用いて,着花量および化性の遺伝について調べ たところ,雄花に関しては,着花量に関与する遺伝子数は比較的少ないものと推測された。雌親クロー ン間の雌花数,雄花数およびその性比を,また同じくF1家系間の上記形質を検定したところ,雌親クロ ーン間に有意差が認められた場合には,それらのF1家系問においても6交配組合せの内4組(67%)で 有意差があり,着花量に関する形質の遺伝性は強いものと考えられた。なお,正逆交雑家系の調査の 結果細胞質遺伝の関与はないものと見られた。

全文情報(1,003KB)