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林業試験場関西支場年報第2号

昭和35年度

序にかえて

ここに報告するものは昭和35年度の実績である。林業試験の宿命として、一年の歩みの微々たるを思うものであるが、着実な前進のあることを疑わない。

”さし木の研究”は関西支場が特に力を入れているものの一つであるが、萌芽枝とホルモン剤処理の併用によって、アカマツのさし木に明るい見透しを得たことや、ポット試験の範囲ではあるが、庇陰と養分要求度との間の興味ある資料が報告されていることなどその好例と考える。

従来の主要なテーマであった”はげ山の緑化”から一歩進んだ経済林への移行試験も、短期育成樹種としてとりあげたフサアカシヤの林分試験を行なう段階となり、その一部の直播と輸送をともなった苗木植栽を終わった。同じ所に設定されたアカシヤモリシマの根りゆう菌接種試験林とともに、その成果は数年のうちにでるものと期待するところである。一方第一次緑化地の成育衰退現象については、その要因として成分的な面を重視する研究が現地およびポット試験で進められているのが注目されよう。

地方支場の存在価値に大きな役割を果たしつつある保護部門も、新たに発生した滋賀県下治山事業地帯のハンノキハムシや、新種名(和名タケノウスイロアツバ)が考定された京都府下の竹林害虫に対する生態と防除の研究が加わり、病害についてはフサアカシヤの得苗率を大きく支配する病原菌の越冬に関する報告のほか、最近農業方面で脚光を浴びつつあるネマトーダについて、特に根腐れ病との関連を究明するための試験調査地が亀山営林署住吉苗畑に設けられたことが楽しまれる。

支場単独の農山村林業経営実態調査は35年度が最初で、林業後進地の育林業展開を分析した京都府下の奥丹波を対象とした本報告はその概要にすぎないが、農林業基本問題との関連において調査結果の的確なはあくと今後の調査方針の確立が望まれる。また、34年度から新しい観点にたつ収穫試験地の設定が行なわれているが、35年度は第2弾として新宮営林署茗荷淵国有林内ヒノキ人工林が対象として選ばれた。なお、定期調査を重ねてきた既往収穫試験地の詳細な調査資料はこの年報に収めるには膨大に過ぎるので、すでに別途発表したので参照せられたい。

土壌研究室関係は専心試験開始後の年数が浅く、そのいずれも成果発表の段階にないが、35年度の業務としては林地肥培試験地の追加設定がアカマツ(京都府下民有林)およびスギ(山崎署国有林)について行なわれ、また、新たに乾性ポドゾール地帯のスギ造林地に対する林地肥効試験地の設定が、高野営林署管内にみられたほか、育苗枝術合理化と苗畑土壌改良に資する土壌調査方法の基準を得るための調査を京都、亀山、および新宮の三営林署苗畑について行なったことなどがあげられよう。

以上、従前からの継続試験以外についての概観的紹介であるが、これを個々の報文について見るとき、年報に対する考え方の個人差が余りにも明りように看取されることをいなめない。これは第1号の序文で”中間報告や断片的成果の摘記にとどまり、期待される文献価値に欠けることをおそれるが・・・・・”と表現した年報の内容的性格のあいまいさからくるもので、その責任を感ずるものであるが、今後はできるだけ文献的価値をあわせた内容の統一をはかりたい考えである。

終わりに、ここに報告する各種の試験研究遂行に寄せられた関係各位の格段のご支援に対し厚い感謝の意を表する。

昭和36年12月

林業試験場関西支場長西村太郎

目次

1.研究項目系統表・・・・・・・・・・(1)

2.試験地位置図・・・・・・・・・・(3)

3.研究の成果

  1. 水源かん養林の機能・・・・・・・・・・(5)
    • 植生焼失が流量へ及ぼす影響・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一(5)
    • 滲透計による蒸発散量の測定・・・・・・・・・・玉木廉士・近藤松一(7)
    • 集水区内の土壌水分調査・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一(9)
    • 工法別地表流下水量測定試験・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一(11)
    • 地被等からの蒸発散量と平均気温・・・・・・・・・・玉木廉士・岡本金夫(12)
    • 気象定時観測・・・・・・・・・・近藤松一・岡本金夫・小林忠一・小林治子(16)
  2. 土砂流出防備林の機能・・・・・・・・・・(16)
    • 林地草生地の流出土砂量の測定・・・・・・・・・・玉木廉士・近藤松一(16)
  3. 瀬戸内地方の経済的治山工法・・・・・・・・・・玉木廉士・星川吉之助(17)
  4. はげ山の緑化試験・・・・・・・・・・(18)
    • はげ山における経済樹種の適応試験・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一(18)
    • 経済樹種の耐陰試験・・・・・・・・・・玉木廉士・松田宗安・小林治子(19)
    • アカシヤ属の導入と根りゅう菌の接種試験・・・・・・・・・・玉木廉士・松田宗安(20)
  5. 樹種の適性・・・・・・・・・・真部辰夫(22)
  6. せき悪地の土壌改良・・・・・・・・・・木下貞次・細田隆治(23)
  7. 第一次緑化地の生育衰退防止・・・・・・・・・・森下義郎・市川孝義(24)
  8. 肥料木の病害・・・・・・・・・・(25)
    • マメ科樹木のくもの巣病防除試験・・・・・・・・・・峰尾一彦・紺谷修治(25)
    • フサアカシア一年生苗の病原菌の越冬について・・・・・・・・・・寺下隆喜代(25)
  9. 肥料木の害虫・・・・・・・・・・(26)
    • ハンノキハムシに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(26)
  10. 交雑育種・・・・・・・・・・(27)
    • マツ属の交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・大山浪雄・豊島昭和・杉村義一(27)
    • スギの交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・大山浪雄・豊島昭和・杉村義一(30)
  11. 広葉樹の育種・・・・・・・・・・(30)
    • フサアカシヤの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和(30)
    • ヤマモモの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和(32)
  12. さし木の活着・・・・・・・・・・(33)
    • さし木の枯損とその防止・・・・・・・・・・森下義郎・岩水豊(33)
    • さし木の発根能力とその増進・・・・・・・・・・大山浪雄(34)
  13. さし木の施肥・・・・・・・・・・(36)
  14. さし木苗の形質に及ぼす施肥の影響に関する研究・・・・・・・・・・木下貞次・細田隆治(36)
  15. 苗畑土壌の改良・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(38)
  16. 苗畑土壌調査・・・・・・・・・・木下貞次・吉本衛・衣笠忠司・細田隆治(38)
  17. 林地の養分天然供給量・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(39)
  18. 肥料の合理的施用法・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(39)
  19. 土壌型と肥効に関する試験・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(40)
  20. 林地肥効試験・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(40)
  21. 外国樹種の適応性・・・・・・・・・・森下義郎・真部辰夫(41)
  22. 施業試験・・・・・・・・・・(41)
    • 外国樹種による短期育成試験・・・・・・・・・・森下義郎・市川孝義・山本久仁雄(41)
    • フサアカシア苗木の移動に関する試験(続)・・・・・・・・・・西村太郎(44)
  23. スギ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(47)
  24. ヒノキ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(48)
  25. 竹林の作業法・・・・・・・・・・鈴木健敬・山崎安久(51)
  26. アカマツ保育形式比較試験・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄(52)
  27. マツカレハの発生消長調査・・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(52)
  28. 林野病害防除試験・・・・・・・・・・(54)
    • スギ造林地の病害防除試験・・・・・・・・・・紺谷修治・峰尾一彦(54)
  29. 林野害虫防除試験・・・・・・・・・・(56)
    • マツノシンマダラメイガの生態・・・・・・・・・・小林富士雄(56)
    • スギハムシに関する研究・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(57)
    • スギノハダニに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄(60)
    • 京都市周辺の蜘蛛目録(II)・・・・・・・・・・西村太郎(61)
  30. 竹林の病害・・・・・・・・・・(63)
    • マダケのテングス病防除試験・・・・・・・・・・紺谷修治・峰尾一彦(63)
  31. 竹林の害虫・・・・・・・・・・(64)
    • タケノウスイロアツバに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄・奥田素男(64)
  32. 民有林経営実態分析・・・・・・・・・・鈴木健敬・岩水豊(65)
  33. 病害鑑定診断ならびに防除対策研究指導・・・・・・・・・・紺谷修治・寺下隆喜代・峰尾一彦(68)
  34. 虫害鑑定防除指導・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄・奥田素男(69)

4.昭和35年気象定時観測・・・・・・・・・・辻一男・木本長信(69)

5.1960年度に研究員の発表した文献目録・・・・・・・・・・(70)

6.情報・・・・・・・・・・(72)

pdfファイルはこちらです。年報第2号(昭和35年度)(PDF:4,978KB)

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