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林業試験場関西支場年報第3号

昭和36年度

序にかえて

林業に関する試験研究のむずかしさ。いまさらそんなことをいってもどうにもならないが、とにかく、その舞台としての自然の条件は、あまりにもしゅん厳であり、その伐採利用されるまでの成育期間はどう考えてみても長い。しかも、われわれの施設、とくに実験室や苗畑、実験林、さらに外部の多くの善意にみちた協力によって提供されている、試験研究のフィールドは、たとえそれがいかに尊いものであったにしても、対象となる林業地の広さと複雑さに比較すれば、まさに九牛の一毛にすぎないといっても過言ではない。

われわれが、もっている研究能力と、与えられた研究施設をフルに回転させることは当然であるが、さらに大事なことは、常に現実の森林、林業地、とくにいろいろの既往の技術の導入によって育てられつつある人工造林地への力強い連携のための太いパイプを確保することが必要である。そしてわれわれの研究がどこまでも林業につながるべきであり、林業として活用される方向へ向こうべきである。そして一つ一つの専門技術が、林業として総合された立場において、どういう位置ずけにあり、どういう役割を果すべきかということの自覚が大切なのである。

そこで、生きた林業とのつながりのパイプの第1として、私は、研究予算とくに研究旅費のことを考える。しかしこの現状の適否は別に論ずることとして、第2に大事なことは、現地の森林所有者や林業経営者の方々の、直接の深い関心と強い要望、そして第3には、いわゆるその仲介的な労をとられている普及組織の方々の、変わらないご利用とご協力である。かくして、現地の要望と問題点が、適切かつじん速に、われわれの手元にとどいてくることが大切である。そのことによって、試験研究の必要性、妥当性とその迫力がより高められるからである。

そして、このパイプに、仕上げと、みがきをつけていただくのが、われわれのよりよき友であり、同じ研究の立場の数多くの研究者のご援助とご協力である。この大事なパイプが円滑な役割を果してこそ、われわれの研究も日進月歩の発展をとげることができるのである。

そして、そのためには、常にわれわれの仕事の経過なり、ものの考え方なりが、これらの大事な関係者に、常に正しく、ありのままに、すみやかに伝えられることが必要である。

林業試験場としては、本・支場を通じて、一本建の研究報告が本場から発行されている。しかしそれは、いずれもそれぞれのテーマの一通りまとまったものについてである。それはそれとして、われわれには毎日々々の研究の年間集計と、1年ごとのとりまとめがある。その一つ一つは、さきざき発表されるであろう研究報告としてまとまるものへの、階段でもあり、その中間報告でもある。その意義はきわめて重要であり、研究者のひとりひとりにとっても、貴重な記録である。しかもそれは、まだ門外不出の段階のものも多いはずである。

そのような意味から、それらをとりまとめることは、試験研究の次のステップの一段階として利用するとともに、反省の資料ともなり、併せて前述の意味での、大事なパイプへの足がかりとしても活用できる点が多いと思われる。そのことはまた、外部の関心の深い方々にとっては、それぞれの試験研究の中間の動きを知っていただく資料ともなり、外部からのご指導なりご利用の手助けともなるものと確信するものである。

さて、この支場の試験研究の本命としては、開設以来、瀬戸内地方の、せき悪林地の緑化の促進、管内に多いアカマツの林の施業改善、この地域で要望される早期育成林業等に関するものの解決をねらってきている。それらを解明するために、育種とくに交雑育種、外国樹種の導入、林木のさし木技術の改善、苗畑や林地の施肥、植付本数別の保育形式、病中害防除対策等関連のあるものを、それぞれの立場で、さらにはそれぞれを組み合わせながら試験研究を進めつつある。そのほか、国有林その他森林の経営計画に必要とする収穫予測に関連するもの、苗畑の土壌調査方法の確立、農家林業の実態分析、竹林の作業法の改善、森林や苗畑の病虫等の生態のは握、鑑定ならびに防除指導等を行なっている。

また岡山分場と玉野試験地においても、支場との連携のもとに、上述の課題を適宜とりあげているが、とくに分場においては、発足以来、森林の理水に関する調査研究を継続している。

この外、関西林木育種場と共同して行なうものもある。

以上のような方針のもとに、年々つづけられてきたものの中から、36年度の分として今回発表するものについても、その内容には幾多の批判を呼ぶものがあるであろう。それをもあえて印刷にするゆえんをご理解願って、それぞれの内容が所期の目的に役立つことを願ってやまない。

われわれが、この年間を通じて、以下発表される試験研究の遂行にあたって、直接、間接に賜わった関係各方面からの数々のご配慮に対して、厚い感謝の意を表するとともに、併せてこんごの変わりないご支援をおねがいする次第である。

昭和37年11月

林業試験場関西支場長徳本孝彦

目次

1.研究項目系統表・・・・・・・・・・(1)

2.試験地位置図・・・・・・・・・・(3)

3.研究の成果

  1. 交雑育種・・・・・・・・・・(5)
    • マツ属の交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・豊島昭和・大山浪雄・杉村義一(5)
    • スギの交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・豊島昭和・大山浪雄・杉村義一(11)
  2. 広葉樹の育種・・・・・・・・・・(12)
    • フサアカシヤの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和(12)
    • ヤマモモの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和(14)
  3. さし木の活着・・・・・・・・・・森下義郎・大山浪雄(15)
  4. さし木の施肥・・・・・・・・・・(17)
    • さし木苗の形質に及ぼす施肥の影響に関する研究・・・・・・・・・・木下貞次・細田隆治(17)
  5. 苗畑土壌の改良試験・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(19)
  6. 苗畑土壌調査・・・・・・・・・・(20)
    • 京都営林署周知2号苗畑土壌調査・・・・・・・・・・河田弘・細田隆治(20)
    • 亀山営林署住吉苗畑土壌調査・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(27)
  7. 苗畑の病害に関する研究・・・・・・・・・・(36)
    • ヒノキ苗の根ぐされ病防除に関する研究・・・・・・・・・・寺下隆喜代・紺谷修治・峰尾一彦(36)
  8. せき悪地における育林技術に関する研究・・・・・・・・・・(38)
    • 樹種の適性・・・・・・・・・・森下義郎・真部辰夫・市川孝義(38)
  9. せき悪地の土壌改良・・・・・・・・・・木下貞次・細田隆治(40)
  10. 外国樹種の導入に関する研究・・・・・・・・・・(42)
    • 外国樹種による短期育成試験・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄・磯尾泰子(42)
    • フサアカシアの育苗形成ならびに苗木の移動に関する試験・・・・・・・・・・西村太郎(45)
  11. スギ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(49)
  12. ヒノキ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(51)
  13. アカマツ天然林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(55)
  14. 竹林の作業法・・・・・・・・・・鈴木健敬・岩水豊・山崎安久(62)
  15. アカマツ保育形式比較試験・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄(63)
  16. 林地の養分天然供給量・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(64)
  17. 肥料の合理的施用法・・・・・・・・・・吉本衛・衣笠忠司(67)
  18. 林地肥培試験・・・・・・・・・・(79)
    • 高野営林署スギ・ヒノキ林地肥培試験・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(79)
    • 山崎営林署スギ林地肥培試験・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(81)
    • 水の尾(京都市)アカマツ林地肥培試験・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(84)
  19. マツカレハの発生消長調査・・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(87)
  20. 林野病害防除試験・・・・・・・・・・(89)
    • スギ造林地の病害防除試験・・・・・・・・・・紺谷修治・峰尾一彦(89)
  21. 林野害虫防除試験・・・・・・・・・・(93)
    • マツノシンマダラメイガの生態・・・・・・・・・・小林富士雄(93)
    • スギハムシに関する研究・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(93)
    • スギノハダニに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄(95)
    • 京都市周辺のクモ目録(III)・・・・・・・・・・西村太郎(96)
  22. 竹林の病害・・・・・・・・・・(98)
    • マダケのてんぐ巣病防除に関する試験・・・・・・・・・・紺谷修治(98)
  23. 竹林の害虫・・・・・・・・・・(103)
    • タケノウスイロアツバに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄・奥田素男(103)
  24. 肥料木の病害・・・・・・・・・・(104)
    • マメ科樹木のくもの巣病防除試験・・・・・・・・・・峰尾一彦・紺谷修治(104)
    • 薬剤によるフサアカシア苗の病害防除・・・・・・・・・・寺下隆喜代(105)
  25. 肥料木の害虫・・・・・・・・・・(106)
    • ハンノキハムシに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(106)
  26. 病害鑑定診断ならびに防除対策研究指導・・・・・・・・・・紺谷修治・寺下隆喜代・峰尾一彦(107)
  27. 虫害鑑定診断ならびに防除対策研究指導・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄・奥田素男(107)
  28. 水源かん養林の機能・・・・・・・・・・(108)
    • 植生焼失が流量に及ぼす影響・・・・・・・・・・玉木廉士・岡本金夫(108)
    • 滲透計による蒸発散量の測定・・・・・・・・・・玉木廉士・近藤松一(110)
    • 除伐・刈払にともなう地表流下水比較試験・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一・小林治子(112)
    • 工法別流下水量比較試験・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一・小林治子(113)
    • 気象観測・・・・・・・・・・近藤松一・岡本金夫・小林忠一・小林治子(114)
  29. 土砂流出防備林の機能・・・・・・・・・・(117)
    • 林地草生地の流出土砂量の調査・・・・・・・・・・・玉木廉士・近藤松一(117)
  30. 瀬戸内地方はげ山の経済的治山工法の研究・・・・・・・・・・(118)
    • はげ山復旧試験区の工種別流出土砂量について・・・・・・・・・・星川吉之助(118)
  31. はげ山の緑化試験・・・・・・・・・・(119)
    • 経済樹種の耐陰試験・・・・・・・・・・・松田宗安・小林治子(119)
    • 発芽促進処理と根粒菌接種・・・・・・・・・・松田宗安・小林治子(120)
    • 硬実性の変異と処理時間・・・・・・・・・・松田宗安・小林治子(122)
    • モリシマアカシアの根系調査・・・・・・・・・・玉木廉士・小林忠一(112)
  32. 民有林経営実態分析・・・・・・・・・・鈴木健敬・岩水豊(123)
  33. 昭和36年気象定時観測・・・・・・・・・・辻一男・木本長信(126)

4.1961年度に研究員の発表した文献目録・・・・・・・・・・(127)

5.情報・・・・・・・・・・(128)

pdfファイルはこちらです。年報第3号(昭和36年度)(PDF:10,456KB)

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