林業試験場関西支場年報第4号
昭和37年度
序にかえて
これは、昭和37年度における業績の概要であります。
成長期間が非常に長くて、しかも成長に影響する因子がきわめて複雑である林業にとって、この1年間の業績それ自体が、どれほどの意味を持つかということを真剣に考えてみるのであります。生物は1日1日と成長をつづけ、樹木や森林は毎年の生長量を大切に積重ねて力強く成長していきます。その中でわれわれの把握しえた、この1年間の成果は大事な意義を持っております。
たとえそのひとつひとつは、あるいは小さくとも、あるいはまた貧弱であったとしても、時にはそれが、耐えがたい失敗の記録でしかない場合であっても、これらはすべてわれわれならびにわれわれの仲間にとって、有益な参考資料となるでしょう。すなわちそれらは、成長期間の長さの縦の系列への貴重な土台となり、一方林業として総合されている複雑な組合せのメカニズムを解明するための糸口となるであろうことを信じています。
さらに、こうしたものの中から、ほんの僅かでも、実際の林業の実行などに役立つものがあるならば、それはまたわれわれの喜びであります。
関西支場は、前々から岡山分場と共同して、せき悪林地の緑化の促進について努力をつづけてきましたが、現状はとくにこんごの保育ならびに樹種、林相の更改などについて、積極的な検討を加えるべき段階といえます。次に、この管内に多いアカマツ林の施業改善については、天然更新にねらいをおいて、管内各方面との協調のもとに進めております。また短期育成林業技術の確立のために、従来から手がけてきた各部門の、関連あるすべての試みを、さらに強力かつ総合的に進めようとしております。とくにその具体的な林業技術体系を作り出すべく、この年から大阪営林局と共同して、樹種ごとに適地を求めて、現地での組立研究もスタートいたしました。
これらの共同研究を始めとする各課題とその経過などは、それぞれの資料のとおりであります。関係方面の端的なご批判とご指導をいただければ幸甚です。
例年のとおり、37年度の試験研究の実施にあたって、絶大なるご理解とご協力をいただいた関係各方面の、機関ならびに個人の方々に対して、深甚なる感謝の意を表し、あわせてこんご一層のご支援をおねがいします。
昭和38年12月
支場長徳本孝彦
目次
1.試験研究項目系統表・・・・・・・・・・(1)
2.試験地位置図・・・・・・・・・・(3)
3.研究の成果
- 交雑育種・・・・・・・・・・(5)
- マツ属の交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・豊島昭和・大山浪雄・杉村義一(5)
- スギの交雑育種・・・・・・・・・・森下義郎・豊島昭和・大山浪雄・杉村義一(12)
- 広葉樹の育種・・・・・・・・・・(13)
- フサアカシヤの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和・竹田泰子(13)
- ヤマモモの育種・・・・・・・・・・大山浪雄・豊島昭和(16)
- さし木の活着・・・・・・・・・・森下義郎・大山浪雄(17)
- 苗畑土壌改良試験・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司・細田隆治(20)
- 苗畑土壌調査・・・・・・・・・・(21)
- 亀山営林署鈴鹿苗畑土壌調査(1)・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司・細田隆治(21)
- 京都営林署周知2号苗畑土壌調査(2)・・・・・・・・・・河田弘・細田隆治(26)
- 苗畑の病害に関する研究・・・・・・・・・・(29)
- Fusarium oxysporum の数 forma のアカマツ苗に対する病原性・・・・・・・・・・寺下隆喜代(29)
- Fusarium moniliformeのアカマツ苗に対する病原性・・・・・・・・・・寺下隆喜代(30)
- せき悪林地における育林技術に関する研究・・・・・・・・・・支場長・造林研究室・土壌研究室・保護研究室・分場長・防災研究室(30)
- せき悪地における育林技術に関する研究・・・・・・・・・・(31)
- せき悪地における樹種の適性・・・・・・・・・・森下義郎・真部辰夫(31)
- 第1次緑化地の生育衰退防止・・・・・・・・・・森下義郎・市川孝義(32)
- 外国樹種の導入に関する研究・・・・・・・・・・(34)
- 外国樹種による短期育成試験・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄・竹田泰子(34)
- 外国樹種の適応性・・・・・・・・・・森下義郎・真部辰夫(38)
- フサアカシヤ養苗試験(予備試験)・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司・細田隆治(38)
- 合理的短期育成技術の確立に関する試験・・・・・・・・・・支場長・経営研究室・造林研究室・保護研究室・土壌研究室・岡山分譲(防災研究室)(40)
- スギ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(44)
- ヒノキ人工林の構造と成長・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(51)
- アカマツ天然林の構造と成長・・・・・・・・・・(53)
- 奥島山アカマツ天然林画伐作業収穫試験地・・・・・・・・・・上野賢爾・山崎安久(53)
- 竹林の作業法・・・・・・・・・・鈴木健敬・岩水豊・山崎安久(56)
- アカマツ保育形式比較試験・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄(57)
- 経過の概要・・・・・・・・・・森下義郎・山本久仁雄(57)
- 西条アカマツ保育形式比較試験地の土壌・・・・・・・・・・河田弘・細田隆治(58)
- 福山アカマツ保育形式比較試験地の土壌・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(61)
- アカマツ林の立地別育成技術に関する研究・・・・・・・・・・徳本孝彦・森下義郎・山本久仁雄・中原二郎・紺谷修治・河田弘・上野賢爾・福田秀雄(65)
- 林地肥培試験・・・・・・・・・・(66)
- アカマツ林地肥培モデル試験(1)・・・・・・・・・・河田弘(66)
- 山崎営林署スギ林地肥培試験(2)・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(68)
- 高野営林署スギ・ヒノキ林地肥培試験(2)・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(70)
- 福山営林署アカマツ成木施肥試験・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(73)
- 水の尾(京都市)アカマツ林地肥培試験(2)・・・・・・・・・・河田弘・衣笠忠司(73)
- マツカレハの発生消長調査・・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(73)
- 林野病害防除試験・・・・・・・・・・(82)
- スギ造林地の病害防除試験・・・・・・・・・・紺谷修治・峰尾一彦(82)
- アカマツ更新地における稚苗の病害調査・・・・・・・・・・紺谷修治(83)
- 林野害虫防除試験・・・・・・・・・・(86)
- マツノシンマダラメイガの生態・・・・・・・・・・小林富士雄(86)
- スギハムシに関する研究・・・・・・・・・中原二郎・奥田素男(86)
- スギノハダニに関する研究・・・・・・・・・・中原二郎・小林富士雄・奥田素男(88)
- モモゴマダラノメイガの生態と防除・・・・・・・・・・小林富士雄(89)
- 竹林の病害・・・・・・・・・・(89)
- マダケのてんぐ巣病防除試験・・・・・・・・・・紺谷修治・峰尾一彦(89)
- 肥料木の病害・・・・・・・・・・(92)
- ボルドー液の散布回数別によるフサアカシヤ苗の病害防除効果・・・・・・・・・・寺下隆喜代(92)
- フサアカシヤのたんそ病菌の生態に関する2、3の観察・・・・・・・・・・寺下隆喜代(93)
- 水源かん養林の機能・・・・・・・・・・(95)
- 植生焼失が流量へ及ぼす影響・・・・・・・・・・福田秀雄・岡本金夫(95)
- 北谷渓岸伐採の影響による流量・・・・・・・・・・福田秀雄・岡本金夫(99)
- 工法別流下水量比較試験・・・・・・・・・・福田秀雄・小林忠一・小林治子(103)
- 昭和37年度流量年表・・・・・・・・・・近藤松一・岡本金夫・小林忠一・小林治子(105)
- 昭和37年気象定時観測・・・・・・・・・・近藤松一・岡本金夫・小林忠一・小林治子(106)
- 土砂流出防備林の機能・・・・・・・・・・(109)
- 林地草生地の流出土砂量の調査・・・・・・・・・・福田秀雄・近藤松一(109)
- 瀬戸内地方はげ山の経済的治山工法の研究・・・・・・・・・・(110)
- 主林木の成長量調査について・・・・・・・・・・福田秀雄・星川吉之助・近藤松一(110)
- 恒久保全を目的とする治山技術の確立・・・・・・・・・・福田秀雄・松田宗安・小林忠一・小林治子(113)
- 治山用樹種の取り扱いに関する研究・・・・・・・・・・(116)
- 経済樹種の導入試験・・・・・・・・・・福田秀雄・松田宗安・小林忠一・小林治子(116)
- 植栽林地土壌水分の測定・・・・・・・・・・福田秀雄・松田宗安・小林忠一・小林治子(117)
- アカシヤ属の導入と根りゅう菌の接種効果試験・・・・・・・・・・福田秀雄・松田宗安・小林忠一・小林治子(117)
- 民有林経営実態分析・・・・・・・・・・(120)
- 東海地区の農家における改良ポプラの栽培について・・・・・・・・・・鈴木健敬・岩水豊(120)
- 鑑定診断ならびに防除対策研究指導・・・・・・・・・・(123)
- 昭和37年度気象定時観測情報・・・・・・・・・・辻一男・木本長信(124)
4.1962年度に研究員の発表した文献目録・・・・・・・・・・(126)
5.関西支場の沿革・・・・・・・・・・(128)
6.関西支場の機構・・・・・・・・・・(129)
7.情報・・・・・・・・・・(129)
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