ここから本文です。
関西支所の全景(平成7年5月19日撮影)
森林総合研究所では、平成6年度から新しい研究基本計画に則って試験研究を推進することになり、当支所では関西地域に根ざした林業の発展と森林の多面的利用技術の高度化を図るため、森林総合研究所の研究問題XII「先進開発地域の森林機能特性の解明とその総合的利用手法の確立」を担当することになり、そのために3つの大課題のもとに9つの中課題を設定し、多くの小課題(実行課題)に係る試験研究を実施することになった。これらの課題は、平成5年度まで実施された旧研究問題XV、XVIを概ね継承するものである。平成6年度は関西支所にとっても、新しく見直された研究問題のもとでの研究開始の年であり、この年報は、新研究問題のもとで実施された研究の概要と、そこで得られた主要な成果を収録したものである。
さて、関西地域では、かなり早い時期から人工林化が進められ、北山、吉野、尾鷲などの優れた先進林業地帯が形成されるとともに、中国・北陸地域に代表される戦後造林による並材生産地帯が共存している。このような地域特性に応じて、まず「風致林・都市近郊林を中心とする森林の機能解明」については、風致林・都市近郊林生態系の機能、都市近郊林の水土保全機能、森林の風致及び環境形成機構、森林生態系の維持・遷移機構等の解明に係る試験研究を行った。
次に、「多様な保続的林業経営と施業技術の体系化」については、多様な森林施業技術と森林の生物害管理技術の高度化、及び保続的林業経営方式の体系化に係る調査研究を行った。また、「森林機能の総合化手法と地域森林資源管理手法の確立」については、森林資源の総合的利用と地域森林資源管理計画手法の開発、並びに地域森林・林業と気候変動の関連解明に関する調査研究を行った。
この年報には、まず冒頭に「研究課題一覧表」が掲げられ、この表の順に実行課題ごとの「試験研究の概要」が記述されている。これらの試験研究の中から主要な22課題を取り上げ、その結果を「主要な研究成果」として詳述した。次に「研究資料」には、篠谷山・新重山収穫試験地における定期調査の結果を取りまとめ、「スギ・ヒノキ人工林の林分成長」及び収穫試験地における長期間の調査結果を取りまとめた「遠藤スギ択伐収穫試験地の林分成長経過」を掲載した。また、平成6年10月に開催した当支所の研究成果発表会の「記録」として、「関西地域のタケの分布拡大」と、「関西地域におけるナラ類集団枯損の被害実態と対策の必要性」の要旨を収録した。これらの内容について、種々ご検討いただき、忌憚のないご意見を賜れば幸いである。
森林総合研究所は、今年開設以来90年の節目を迎える。これを契機に、関西支所も地域に開かれた研究所として、今後一層、地域の各種研究機関や行政機関と密接な連携を図りたいと考えている。関係各位の絶大なるご協力、ご支援をいただきたく、心からお願い申し上げたい。
平成7年9月
森林総合研究所関西支所長陶山正憲
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第36号(平成6年度)(PDF:7、455KB)
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.