森林総合研究所関西支所年報第48号
平成18年度

シデコブシ(撮影:平山貴美子氏)
約300年後に絶滅すると予測されています。(環境庁2000)
まえがき
森林総合研究所は独立行政法人となって、第2中期計画期間の初年度が経過しました。この第2中期計画では、前期で指摘された業務の一層の効率化、社会の森林に対するニーズの変化と、それに関連して実施された「新たな森林・林業基本計画」の見直しなどを受けて、森林総合研究所が実施すべき研究課題を大幅に重点化しました。その結果、研究課題は、まず開発研究として「(1)地球温暖化対策に向けた研究」、「(2)森林と木材による安全・安心・快適な生活環境の創出に向けた研究」、「(3)社会情勢変化に対応した新たな林業・木材利用に向けた研究」を、また基礎研究として「(4)新素材開発に向けた森林生物資源の機能解明」と「(5)森林生態系の構造と機能の解明」の5つの重点分野に整理されました。さらに、これら各重点分野の元に2~4個の重点課題を設けて、総計で12個の重点課題を推進する形で実際の研究が実行されています。
また、森林総合研究所は林木育種センターと統合され、従来の森林・林業・木材産業に関する総合研究を林木育種事業と一体的に実施することになりました。今後は、関西支所も管内の関西育種場との業務連携を図りながら、一体的な研究成果の普及・広報などを推進いたします。
関西支所では、中期目標に向けて研究や業務運営に取り組み、主に重点課題「森林の保健・レクレーション機能等の活用技術の開発」において、都市近郊・里山林における機能解明と評価を行って、プレスリリースや「研究最前線」などで得られた研究成果の普及・広報を図って参りました。今後とも、その実用化を見据えた将来展開を図って研究に取り組む必要がありますし、より一層の研究成果の公表と普及に努める考えです。
本年報は、当支所の平成18年度における試験研究の概要、主要な研究成果、およびその他の業務関連資料を取り纏めたものです。これらの資料を皆さまの業務にいささかでもお役立て頂ければ幸いです。また、皆さまからは忌憚のないご意見などをお聞かせ頂ければ有り難いと思っています。
平成19年8月
森林総合研究所関西支所長北原英治
目次
- 森林総合研究所関西支所関係抜粋
- 森林吸収量把握システムの実用化に関する研究
- 地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発
- 環境変動と森林施業に伴う針葉樹人工林のCO2吸収量の変動評価に関する研究
- 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合的評価に関する研究
- CDM植林が生物多様性に与える影響評価と予測技術の開発
- 沖縄ヤンバルの森林の生物多様性に及ぼす人為の影響の評価とその緩和手法の開発
- 重点対策地域としての沖縄・奄美地方における侵入種影響および駆除対策に関する研究
- 生物間相互作用に基づくニホンジカ密度の推定法と広域的な森林生態系管理手法の開発
- 人為的要因によって小集団化した希少樹種の保全管理技術に関する研究
- 希少種アマミノクロウサギの遺伝学的手法を用いた個体数推定と遺伝的構造の把握
- クロマツの第二世代マツ材線虫病抵抗性種苗生産システムの構築
- 東アジアにおける病原微生物の移・侵入ルート
- ナラ類集団枯死被害防止技術と評価法の開発
- サビマダラオオホソカタムシを利用したマツノマダラカミキリ防除技術
- ツキノワグマの出没メカニズムの解明と出没予測手法の開発
- 獣害回避のための難馴化忌避技術と生息適地への誘導手法の開発
- 水流出に及ぼす間伐影響と長期変動の評価手法の開発
- 流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発
- 地域性をふまえた大井川中流域の景観の保全と活用に関する研究
- 流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発
- 人と自然のふれあい機能向上を目的とした里山の保全・利活用技術の開発
- 日本列島における人間-自然相互関係の歴史的・文化的検討
- 林業経営体の経営行動のモデル化と持続可能な経営条件の定量的評価
- 「日本林業モデル」の開発と新林業システムの経済評価
- 地域資源活用と連携による山村振興
- 森林所有権の流動化が森林管理と中山間地域の活性化に及ぼす影響の解明
- 大面積皆伐についてのガイドラインの策定
- タケ資源の持続的利用のための竹林管理・供給システムの開発
- 基準・指標を適用した持続可能な森林管理・計画手法の開発
- スギ雄花形成の機構解明と抑制技術の高度化に関する研究
- 主要樹種の遺伝構造及び適応的遺伝子の解明
- 湿地林を構成する希少木本種の繁殖と更新に及ぼす遺伝的荷重の影響の解明
- 衰退した森林の自然再生を目的とした生残樹木の繁殖成功に関する分子生態学的評価
- 森林の物質動態における土壌の物理・化学的プロセスの解明
- 土壌・微生物・植物間の物質動態に関わる生物・化学的プロセスの解明
- 森林土壌におけるエステル硫酸態イオウの保持機構の解明
- 新しい機器を用いた樹木根系の空間分布及び動態の解明
- 森林流域の水質モニタリングとフラックスの広域評価
- 根の生理指標を用いた土壌酸性化に対する樹木への影響評価
- 森林生態系における水動態の解明
- 森林生態系の微気象特性の解明
- 基岩-土壌-植生-大気連続系モデルの開発による未観測山地流域の洪水渇水の変動予測
- 環境変化にともなう野生生物の遺伝的多様性および種多様性の変動要因解明
- 野生生物の生物間相互作用の解明
- 森林健全性保持のために重要な生物群の分類・系統解明
- 抵抗性アカマツから材線虫病抵抗性遺伝子群を特定する
- 森林タイプ・樹齢・地質の違いが底生動物の群集構造に与える影響の解明
- 大面積風倒発生地における植生遷移とニホンジカによる利用度の推移
- インドシナ半島におけるマカク属の進化:アカゲザルとカニクイザルを主として
- 樹木加害微生物の樹木類への影響評価と伝播機構の解明
- 樹木寄生性昆虫の加害機構の解明と影響評価
- 養菌性キクイムシと共存する菌類群集の役割
- 樹木集団の個体群構造が繁殖及び遺伝子流動に与える影響の解明
- モジュール動態による低木類の生育状態評価:多種共存に配慮した里山管理計画の立案
- 針葉樹人工林の下層植生に林分配置がおよぼす影響
- チャンバー法と乱流変動法による山城試験地の夜間生態系呼吸量推定結果の比較
- ツキノワグマの遺伝的多様性-本州西部孤立個体群と本州中部連続個体群の比較-
- サビマダラオオホソカタムシのマツ枯損被害地における放飼試験(土着地域における放飼試験)
- ロジスティック回帰モデルを使って立地条件から伐出作業システム型を事前判定する
- 紀州地方ヒノキ林分の直径成長について-長期固定試験地における測定資料から-
- 白見スギ収穫試験地の林分構造と成長
- 茗荷淵ヒノキ収穫試験地の林分構造と成長
- 遺伝子をつかって何ができるの?何がわかるの?
- 絶滅危惧種シデコブシの現状と遺伝的管理の可能性
- 遺伝的多様性を保全するための遺伝研究と森林管理
- 平成18年度試験研究発表題名一覧
- 沿革
- 土地及び施設
- 組織
- 人の動き
- 会議等の開催
- 依頼出張
- 職員研修
- 受託研究員受入
- 特別研究員
- 海外派遣・出張
- 業務に必要な免許の取得・技能講習等の受講
- 見学者
- 試験地一覧表
- 気象年報
- 標本展示・学習館
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第48号(平成18年度)(PDF:450KB)