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ホーム > 研究紹介 > 刊行物 > 森林総合研究所関西支所年報第53号

更新日:2021年11月17日

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森林総合研究所関西支所年報第53号

平成24年版

左写真:調査のために捕獲されたコマドリLuscinia akahige 森林の下層植生が衰退した地域で減少している 右写真:平成23年台風12号により奈良県十津川村で発生した深層崩壊地

まえがき

平成23(2011)年度には大きな災害がありました。3月11日の東日本大震災では、巨大地震とその直後の想定外の大津波によって甚大な被害を受け、さらに東京電力福島第一原子力発電所の事故により広域の放射能汚染の被害を被りました。放射能汚染への対応では森林生態系内の汚染状況と除染効果、渓流水や木材内部の汚染度の調査、そして津波関係では海岸林の被害軽減効果の検証などが、緊急対応として森林総合研究所に求められました。9月上旬には、台風12号の影響で8月30日から降り始めた雨は西日本の広い範囲で記録的な大雨となり、特に紀伊半島では9月3日~4日にかけての集中豪雨によって各所で大規模に山腹が崩壊して土砂ダムを形成するなど、家屋の流出や人的被害とともに、森林にも大きな被害をもたらしました。
平成23(2011)年度は森林総合研究所の第3期中期計画の初年度であり、今期の関西支所の主要な研究課題は、「里山課題」と「林業課題」です。「里山課題」は、第2期の途中から開始した交付金プロジェクト「A2P03現代版里山維持システム構築のための実践的研究:H21~25」を中心としています。プロジェクトでは実施できない部分については、一般研究費による実行課題「G211里山地域における森林の総合管理のための機能評価:H23~25」で対応しています。「林業課題」では、実行課題「A122優良壮齢人工林へ誘導するための施業要件の解明と立地・社会環境要因の評価:H23~25」を開始しました。特に、近畿中国地方の木材生産現場における現況を把握するとともに地域の森林管理に対するニーズを幅広く吸収することにより、ヒノキ人工林の中期的な管理技術構築に向けた研究課題を設定することを目的として、交付金FSプロジェクト「近畿中国地域の人工林資源の賦存特性に基づいた持続的利用を目指した林業技術開発のための予備研究」を本年度のみの単年度で実施しました。
4月には、産学官連携に取り組むため、各支所の研究調整監が産学官連携推進調整監に振替えられました。平成22(2010)年度には、本所に産学官連携推進調整監と産学官連携推進室が、そして四国支所に産学官連携推進調整監が設置されていましたが、本年度からは全支所で産学官連携への取組を強化する体制となりました。第3期中期計画では、「産学官の連携・強化については、国、他の独立行政法人、都道府県、大学、民間企業等との連携・協力を進め、効率的な研究開発の実施及び成果の利活用の促進に努める。」としており、国有林野を活用した研究開発・森林管理局が行う技術開発への協力等による国有林野事業との連携強化、公立林業試験研究機関等に対する技術指導等による連携・協力関係の強化が明示されています。
国立大学法人三重大学との連携大学院の設置は関西支所の数年来の懸案でしたが、森林総合研究所理事長と三重大学学長との間で「教育研究に係る連携・協力に関する協定書」が4月1日に締結されました。関西支所では、生物資源学研究科長との間で協定に関する覚書を同日付けで取り交わしました。大学院入試の結果、自然環境システム学講座で自然共生学を学ぶ社会人1名が合格し、次年度から共生環境学専攻自然環境システム学講座で自然共生学の連携教育研究分野を開設することになりました。
JST(科学技術振興機構)サマーサイエンスキャンプを関西支所で開催するのは3年連続で3回目でした。全国的に被害が拡大している「ナラ枯れ」をテーマに、病原菌培養・被害木中のカシノナガキクイムシ調査等の実習とナラ枯れ感染木が枯れる仕組み等の講義による「ナラ枯れのメカニズムを探る-カシノナガキクイムシが運ぶナラ菌-」を実施しました。また、JSTが支援するSPP(サイエンスパートナーシップ:講座型学習活動支援)は、高校等が研究機関等の連携を受けて講座を実施する体験的・問題解決的な学習活動で、京都府立莵道高校の申請が採択され、関西支所が連携して11月に実施しました。森林生態系研究グループが主体となって、高校生25名を対象に、1回/週で3回の生態調査の講義・野外調査実習・データ取りまとめと成果発表の講義と実習、そして11月23日には支所見学で研究の現場を見てもらいました。
今年度の公開講演会は、森林を健全に管理するための手法を話題とした「むし・しか・かび 森林林業に被害を与える生きものたち」のテーマで、森林農地整備センター近畿北陸整備局と連携して、11月22日(木曜日)に龍谷大学アバンティ響都ホールで開催しました。

平成25年1月

森林総合研究所関西支所長 藤井智之

目次

1.平成23年度研究課題一覧(PDF:242KB)

  1. 森林総合研究所関西支所関係抜粋

2.関西支所における研究課題の取り組み(PDF:155KB)

3.平成23年度関西支所の研究概要(PDF:620KB)

  1. スギ再造林の低コスト化を目的とした育林コスト予測手法及び適地診断システムの開発
  2. 健全な物質循環維持のための診断指標の開発
  3. 優良壮齢人工林へ誘導するための施業要件の解明と立地・社会環境要因の評価
  4. 近畿中国地域の人工林資源の賦存特性に基づいた持続的利用を目指した林業技術開発のための予備研究
  5. 広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発
  6. 現代版里山維持システム構築のための実践的研究
  7. 多様な森林機能の評価・配置手法の開発
  8. 天然更新を利用した多様な森林タイプへの誘導技術の検証と高度化
  9. 文献調査等による森林シュミレータ開発のための個別機能評価手法の分析
  10. 木材利用拡大に向けた林業振興のための条件と推進方策の解明
  11. 限界集落における持続可能な森林管理のあり方についての研究
  12. 私有林経営における組織イノベーションに関する国際比較研究
  13. 未利用木質バイオマスを用いた炭素貯留野菜によるCO2削減社会スキームの提案と評価
  14. アジア陸域炭素循環観測のための長期生態系モニタリングとデータのネットワーク化促進に関する研究
  15. 葉のオゾン吸収量に基づいた樹木に対するオゾンの影響評価に関する研究
  16. 森林及び林業分野における温暖化緩和技術の開発
  17. 地球温暖化が日本を含む東アジアの自然植生に及ぼす影響の定量的評価
  18. タワー観測を用いた群落炭素収支機能等を表すパラメータセットの構築と評価
  19. 森林土壌におけるグロマリン現存量とその集積に関与する鉄化合物の解明
  20. 間伐促進のための低負荷型作業路開設技術と影響評価手法の開発
  21. 地球温暖化が森林及び林業分野に与える影響評価と適応技術の開発
  22. 高エネルギーX線吸収分光法を用いた土壌中イオウ化合物の形態とその分解抵抗性の解明
  23. 古生層堆積岩山地小流域における水流出特性解析
  24. 新たな「樹木根系の斜面補強機能の数値化技術」の開発
  25. 山地災害の被害軽減のための新たな予防・復旧技術の開発
  26. 土を掘らずに地中探査用レーダを用いて樹木根バイオマスを推定する方法の確立
  27. 地形・土壌・植生の発達・崩壊シミュレーション手法の開発
  28. ニホンジカが南アルプス国立公園の自然植生に及ぼす影響とその対策に関する研究
  29. 林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発
  30. 支笏洞爺国立公園をモデルとした生態系保全のためのニホンジカ捕獲の技術開発
  31. 生態情報を利用した環境低負荷型広域病虫害管理技術の開発
  32. 野生動物管理技術の高度化
  33. 長期的餌資源制限がニホンジカの生活史特性へ及ぼすフィードバック効果の解明
  34. シイ・カシ類の集団立ち枯れ被害に対する緊急対応策の策定
  35. 侵略的外来種ソウシチョウと在来生物群集の関係はシカ密度増加でどのように変化するか
  36. 伊豆諸島におけるカシノナガキクイムシ実態調査・薬剤注入手法調査
  37. 種子消費者との相互作用に基づいたコナラ属種子に含まれるタンニンの機能解明
  38. 種特性に基づいた里山二次林の多様性管理技術の開発
  39. 里山地域における森林の総合管理のための機能評価
  40. 森林の生物多様性の質と機能の評価手法の開発
  41. マレーシア産きのこ類のインベントリーとDNAバーコード
  42. 亜熱帯中国に生起した「アジア型」酸性化の実態解明:生物・微生物相の変容とその機構
  43. 異所的集団の種分化研究と種分類学- DNAバーコードを超えて
  44. トカラ列島における森林性鳥類の生物地理:渡瀬線を挟んだ島々での繁殖分布と集団構造
  45. 里山構成種の生理的可塑性と共存機構における林冠ギャップの機能評価
  46. エゾヤチネズミ個体群の遺伝的空間構造形成に関わる個体数変動と分散行動の効果
  47. 絶滅のおそれのあるツキノワグマ孤立個体群におけるMHC遺伝子の多様性評価
  48. 森林資源保全のための樹木遺伝子バーコードの基盤構築と有効性に関する研究
  49. サクラの系統保全と活用に関する研究
  50. 森林水文モニタリング
  51. 収穫試験地における森林成長データの収集

4.研究資料(PDF:515KB)

  1. 基盤事業:森林水文モニタリング-竜ノ口山森林理水試験地-
  2. 滝谷スギ人工林収穫試験地定期調査報告-B種間伐区、上層間伐区、ナスビ伐り区の比較-

5.試験研究発表題名(PDF:423KB)

  1. 平成23年度 試験研究発表題名一覧

6.組織・情報・その他(PDF:468KB)

  1. 沿革
  2. 土地及び施設
  3. 組織
  4. 人の動き
  5. 受託出張
  6. 職員研修
  7. 受託研修生受入
  8. 特別研究員
  9. 海外派遣・出張
  10. 業務遂行に必要な免許の取得・技能講習等の受講
  11. 見学者
  12. 会議
  13. 諸行事
  14. 試験地一覧表
  15. 森の展示館(標本展示・学習館)

一括版のpdfファイルはこちらです。年報第53号(平成24年版)(PDF:2,659KB)

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