森林総合研究所関西支所年報第56号
平成27年版


左写真:岡山県新見市三光山国有林に設定した低コスト再造林研究に関する調査を実施中 右写真:マルチキャビティコンテナで育てられた2年生ヒノキ苗、関西支所構内で成長などを調査中
まえがき
平成26年度は森林総合研究所第3期中期計画期間の4年目に相当する。第3期中期計画における9つの重点課題の中で、森林・林業の再生に向けた政策を支える研究として重点課題A「地域に対応した多様な森林管理技術の開発」が設定され、関西支所では近畿・中国地域の現状に対応した林業課題として、一般研究費による実行課題「A122優良壮齢人工林へ誘導するための施業要件の解明と立地・社会環境要因の評価(H23~27)」を実施し、また、平成26年度から2年間の計画で攻めの農林水産業の革新的技術緊急展開事業「A1P06コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究」の中で、ヒノキコンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の開発に取り組んだ。一方、里山課題として実行課題「G211里山地域における森林の総合管理のための機能評価(H23~27)」を実施した。さらに、農林水産技術会議委託プロジェクトなどの研究課題に参画するとともに、関西支所研究職員が主査として5課題の科学研究費助成事業による研究課題も実施した。
一方、研究課題の実施に加えて産学官連携、地域連携への取り組みを強化した。近畿中国森林管理局との「近畿及び中国地域の森林・林業に関する研究と技術開発等の円滑な促進に向けた連携と協力に関する協定」に基づき、「ヒノキ実生コンテナによる低コスト再造林技術の開発」研究成果の普及のための現地検討会を10月9日~10日に共催し、各府県、森林組合等から多くの参加者を得た。国立大学法人三重大学生物資源学研究科との連携大学院では支所の研究職員3名が連携教員として教育に携わった。また、京都府立莵道高校が申請したJST(科学技術振興機構)のサイエンスパートナーシッププログラムが前年度に引き続き採択され、森林生態研究グループが講義、実習を実施した。京都大学生態学研究センター公開講演会「つなぐ・つながる生物多様性:世界自然遺産サイトでの生物多様性研究と保全―小笠原・白神山地を例に―」開催に際して後援を、大阪市立大学理学部附属植物園とは「ナラ枯れ研究会」を共催した。この他、近畿中国森林管理局の「水都おおさか森林の市」、近隣の中学生を対象とした「チャレンジ体験学習」、森の展示館を活用した「森林教室」などを実施した。10月17日には公開講演会「森のなか、シカが増えすぎて・・・」をキャンパスプラザ京都において開催し、約200名の聴衆者を集めた。
今後も関西支所では近畿中国地方における森林・林業に関するさまざまな問題の解決に向け、研究技術開発に取り組むとともに、その成果の広報と社会還元・普及に精力的に取り組んでまいりますので、一層のご支援とご協力をお願いいたします。
平成27年12月
森林総合研究所関西支所長 吉永秀一郎
目次
- 森林総合研究所関西支所関係抜粋
- コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究
- 健全な物質循環維持のための診断指標の開発
- 優良壮齢人工林へ誘導するための施業要件の解明と立地・社会環境要因の評価
- 広葉樹林化技術の実践的体系化研究
- 多様な森林機能の評価・配置手法の開発
- 天然更新を利用した多様な森林タイプへの誘導技術の検証と高度化
- 秋田スギの成立および変遷に及ぼした人為影響の解明
- 歩いて調べる沖縄「やんばる」における近代の森林利用の展開過程
- 沖縄県北部地域内における国立公園区域案及び森林資源の利用の検討に対する造林事業の影響の分析
- 木材需給調整手法の解明と新たな原木流通システムの提案
- 木材利用拡大に向けた林業振興のための条件と推進方策の解明
- 現代的森林管理論と制度・政策の枠組み構築
- 木質バイオマスエネルギー事業の評価システムの開発
- 森林吸収量把握システムの実用化に関する研究
- 森林及び林業分野における温暖化緩和技術の開発
- 地球温暖化が日本を含む東アジアの自然植生に及ぼす影響の定量的評価
- センサーネットワーク化と自動解析化による陸域生態系の炭素循環変動把握の精緻化に関する研究
- タワー観測を用いた群落炭素収支機能等を表すパラメータセットの構築と評価
- 環境の変化に対する土壌有機物の時・空間変動評価
- 安定同位体パルスラベリングを用いた樹木内炭素循環速度の樹種間比較
- 地球温暖化が森林及び林業分野に与える影響評価と適応技術の開発
- 森林流域からの水資源供給量に関わる気候変動の影響評価
- 森林における水文過程の変動予測手法の開発
- 古生層堆積岩山地小流域における水流出特性解析
- 土壌中でエステル硫酸はアルミニウム腐植複合体に取り込まれるのか?
- 地すべりにおける脆弱性への影響評価
- 安全な路網計画のための崩壊危険地ピンポイント抽出技術
- 減災の観点から樹木根系の広がりを非破壊的に評価する方法の確立
- 局所的豪雨による山地災害の発生機構
- 過去1300年間の風水害被害の復元-地球温暖化・寒冷化の被害予測に向けて-
- 広葉樹資源の有効利用を目指したナラ枯れの低コスト防除技術の開発
- ローカライズドマネジメントによる低コストシカ管理システムの開発
- ニホンジカ生息地におけるスギ・ヒノキ再造林手法の開発
- 生態情報を利用した環境低負荷型広域病虫害管理技術の開発
- 野生動物管理技術の高度化
- 菌類を活用した花粉症起因植物に対する花粉飛散防止法の開発
- ナラ枯れにおける防御物質と毒素による樹木と病原菌の相互作用の解明
- 開放系森林生態に導入した菌類微生物の動態解明と環境への影響評価
- 里山地域における森林の総合管理のための機能評価
- 絶滅寸前のカモシカ地域個体群の新たな個体数センサス法の開発
- 東アジアの森林を支える菌根菌ネットワークの生態系機能の解明
- 放射性物質による水生昆虫への汚染度の解明
- 海の島と陸の島に棲む希少鳥類・コマドリの地域的減少が遺伝的多様性に及ぼす影響評価
- 遺伝情報に基づいた侵略的外来種ソウシチョウの駆除管理ユニットの策定
- 渓流魚の餌となる水生昆虫への放射能汚染による影響の実態解明
- 森林水文モニタリング
- 降雨渓流水質モニタリング
- 収穫試験地における森林成長データの収集
- 樹体内水・炭素利用プロセスに立脚した樹木成長の降雨応答機構の解明
- 小笠原乾性林における土壌乾燥に伴う樹木水利用の時系列変化と乾燥枯死回避メカニズム
- 同位体パルスラベリング法を駆使した樹木根圏炭素動態とその制御機構の解明
- 基盤事業:森林水文モニタリング-竜ノ口山森林理水試験地-
- 基盤事業:森林流域の水質モニタリング
- 篠谷山スギ収穫試験地(鳥取県日野郡江府町)定期調査報告-山陰地方におけるスギ人工林の成長について-
- 平成26年度 試験研究発表題名一覧
- 沿革
- 土地及び施設
- 組織
- 受託出張
- 職員研修
- 受託研修生受入
- 特別研究員
- 海外派遣・出張
- 業務遂行に必要な免許の取得・技能講習等の受講
- 見学者
- 会議
- 諸行事
- 試験地一覧表
- 森の展示館(標本展示・学習館)
一括版のpdfファイルはこちらです。年報第56号(平成27年版)(PDF:2,735KB)