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ホーム > 研究紹介 > 刊行物 > 森林総合研究所関西支所年報第43号 > 年報第43号 関西支所における研究推進の背景と方向

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年報第43号 関西支所における研究推進の背景と方向

1. 独立行政法人化と組織変更

森林総合研究所は平成13年4月1日から独立行政法人になりました。独立行政法人とは政府が持っていた政策の立案機能と実施機能を分離し、政策の実施を担当する組織として新しく作られたものです。森林総合研究所は農林水産省が示した達成目標である中期目標を実現するために自ら立てた中期計画によって研究の方向や目的を国民の前に明らかにしながら研究の質を高めていきます。そのため、行政課題に対応した分野横断的・総合的研究を実施し、社会の二一ズに迅速に対応するための柔軟性のある組織作りを基本に、本所の研究部では部科制の廃止、大研究室制の導入等、内部組織のフラット化が図られました。関西支所においても、これまであった部が廃止され、研究調整官および地域研究官が配置されるとともに、研究室についてはこれまでの研究室を研究分野ごとに統合するグループ制と、プロジェクト研究の推進並びに地域研究の重点化を図るためのチーム制が導入されました.

2. 新たな研究推進方向・・・重点研究推進方向

独立行政法人化後の森林総合研究所は、森林・林業・木材産業にかかわる中核的な研究機関として、科学的知識の集積を図りながら、行政や社会的二一ズに関連した分野横断的・総合的研究を一層推進するため、平成12年12月に公表された「林政改革大綱」および「林政改革プログラム」に基づいて策定した「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」を踏まえ、以下の11(ア~サ)の研究分野について重点的に研究を推進することとなっています。

  1. 森林における生物多様性の保全に関する研究
  2. 森林の国土保全水資源かん養、生活環境保全機能の高度発揮に関する研究
  3. 森林に対する生物被害、気象災害等の回避・防除技術に関する研究
  4. 多様な公益的機能の総合発揮に関する研究
  5. 地球環境変動下における森林の保全再生に関する研究
  6. 効率的生産システムの構築に関する研究
  7. 森林の新たな利用を促進し山村振興に資する研究
  8. 木質資源の環境調和・循環利用技術の開発に関する研究
  9. 安全・快適性の向上を目指した木質材料の加工・利用技術の開発に関する研究
  10. 生物機能の解明と新素材の開発に向けた研究
  11. 森林・林業・木材産業政策の企画立案に資する研究

また、これらの研究のほかに、長期にわたる観測・測定や、長期的視点に立った基盤的研究、将来の社会的問題に備えるための科学的新知見を探求するための基礎研究を推進していきます。

3. 関西支所の担当する研究課題

これまでの森林総合研究所では、所全体としての研究推進方向に従いつつ、本所の各部・各支所それぞれが異なる大きな研究テーマを担当していました。個別の具体的な研究諏題は、それぞれが担当する研究テーマにそって部・支所ごとに立案・実行されていました。

独立行政法人化後は、各研究分野すべてが本所の管理となり、関西支所の研究課題も、上に述べた11の研究分野の一部を構成するものとして位置づけられることになりました。

その中でも関西支所が特に重点的に推進していく予定なのが、「キ. 森林の新たな利用を推進し山村振興に資する研究」です。関西支所では、この研究分野に属する課題「里山・山村が有する多様な機能の解明と評価」のうち、以下の2つの研究項目にまたがる5つのテーマを担当します。

研究項目: 里山の公益的機能及び生産機能の自然的・社会的評価に基づく保全・管理手法の開発

  • 都市近郊・里山林の生物多様性評価のための生物インベントリーの作成
  • 人と環境の相互作用としてとらえた里山ランドスケープ形成システムの解明
  • 都市近郊・里山林における環境特性の解明
  • 都市近郊・里山林の管理・利用実態の解明

研究項目: 保健・文化・教育機能の評価と活用手法の開発

  • 保健休養機能の高度発揮のための森林景観計画指針の策定

ほかに、関西支所が比較的大きな部分を担当する研究としては以下のようなものがあります。

  • 崩壊に瀕した大台ケ原森林生態系の修復のための生物間相互作用の解明
  • サル・クマ等の行動・生態と被害実態の解明
  • マツ抵抗性強化技術の開発

このほかにも、さまざまな研究テーマのなかで研究を分担し、また基礎・基盤的研究にも取り組んでいきます。