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更新日:2016年1月29日
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テーマ:「Sustainable Should Be Female Scientists' Career!
女性科学者の持続的キャリア形成を目指して
~理系分野における男女共同参画とワークライフバランスをめぐる環境~」
日時 | 2008年07月10日(木曜日)-12日(土曜日) |
場所 | 北海道大学百年記念会館、理学部大講堂 |
主催 | 北海道大学女性研究者両立支援企画室 |
参加者 | 金指あや子 |
”No Quality Without Equality!”(いいクオリティ(質)はイクオリティ(平等)から!)
このシンポジウムにおいて、主催者(有賀早苗教授・北海道大学女性研究者支援室長)によるシンポジウムの締めの挨拶で紹介された言葉です。これがキーワードとされた本シンポジウムの概要を以下に簡単に紹介します。
シンポジウムでは
の6つのセッションがあり、10人の講演者による講演と21のポスター発表(森林総研からも、エンカレッジモデルと19年度の成果について発表)がありました。特にBoys Be Integrated!やDual-Career Academic Couplesに関わる課題に関して、非常に熱心な討議があり、印象的でした。
Dual-Career Couples: 日本では昨年度の男女共同参画学協会連絡会による1万4千人規模の意識調査結果から、男性研究者の配偶者は専業主婦も含めた様々な職種の女性である一方、女性研究者の配偶者の多くは研究者である実態が認められています。これによって、女性研究者の問題は配偶者である男性の研究継続の問題も包含されていることが示された訳です。この状況は欧米でも同様ですが、Dual-Career Coupleについてすでに検討がなされ、それを受け入れる土壌はハード・ソフトの両面で日本よりも進んでいるのが現状です。日本では、男女問わずに厳しく狭い門戸が何よりも高いハードルになっている現状があり、ポスドクの若い参加者からの不安が語られ、海外からの参加者にとって驚きを持って受け止められました。
Boys Be Integrated!: Soldati氏(University of Geneva、スイス)は、自身と同じ生化学分野の研究者である妻とともに自身のキャリアをヨーロッパ、アメリカなど様々な国を巡る中で見事に進めつつ、夫婦で50時50分の負担で4人の子供の養育をしているスーパーカップルとしての経験を、非常にインパクトのある講演で紹介されました。ちなみに冒頭の言葉「No Quality without Equality!」も、このSoldati氏によるものです。
一方、日本の男性研究者からも、アメリカと日本、次いで国内での遠距離結婚を乗り越えて夫婦で築いている研究キャリアの継続とそのための夫妻の努力の経験談が語られました。日本の場合は、夫婦のどちらか一方が単身となることに特徴があり、それがSoldati氏夫妻との大きな違いです。
上の2つの話題は、いずれも流動的な就職のチャンスがどれだけあるかという問題と大きく関わっています。終身雇用から任期付き、テニュアトラック、さらにはキャリアパスの門戸開放が大きく進んでいる欧米と比べ、日本では、ポスドク問題と裏腹に職業としての研究の場や流動化の展望は限られており、家族の負担を夫妻で共に抱える若い研究者に、希望が見えにくい現状が大きな課題として提示されました。一方で、日本の男性研究者も、家庭での育児負担などを妻と「共有」することが、特に若い世代では「当たり前」になっていることを最近感じていましたが、これを確信されられたシンポジウムともなりました。
アカデミアにおける男女共同参画推進の意義
―科学技術の振興、ならびにワークライフバランスと少子化対策の視点から―
政府による男女共同参画基本法の制定とその背景、さらに、男女共同参画担当大臣としてその後の施策について講演がありました。男女共同参画を担当する人なら多くが知っている内容を基本とした講演でしたが、法の制定や男女共同参画基本計画や科学技術基本計画への数値目標の設定には、猪口氏他多くの関係者の非常に大きな尽力があったことを改めて知らされました。実は正直に言えばあまり期待しないまま参加した講演会でしたが、男女共同参画に関わる施策を展開させるための様々なご苦労など、猪口氏ならではの強い決意と、任にあたった上での前向きの姿勢がひしひしと伝わるすばらしい講演でした。
男女共同参画室 金指あや子: 記
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