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更新日:2017年8月2日

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第6回名古屋大学東京フォーラム

テーマ:「新しい時代を切り開く人材の育成を目指して-名古屋大学が育てる勇気ある知識人-」

 日時  2008年11月7日(金曜日)12時00分-17時00 分
 場所  学術総合センター一橋記念講堂・中会議場
 主催  名古屋大学
参加者 酒井 佳美、高橋 公子

 

  参加報告

野依先生の講演では、抜本的な大学院改革、高等教育(大学以上)の充実を図っていかなくては、研究領域で海外から取り残されてしまうとの強い危機意識に基づく持論を展開した。戦後60年で学生の質は変化したが、教育する側はそれに対応するように変化していない。大学院教育は国家戦略とすべきである。まず、大学院は世界を先導する最高の教員と学生の流動的な集積体とすべきである。それには、どのように名古屋大学が選ばれるかが大事である。そこで、ブランド力を持ってアピールすることが必要。世界では良い学生を世界中から集めるために奨学金の存在を利用している。日本ではこれが理解されず、世界から孤立している。大学における教育理念、目標や内容、支援策については、入学試験前に学生に提示しアピールしなくてはいけない。一方、大学のマネージメントは先生に任せてはいけない。経営と教学の役割分担を明確化し、教員の教育研究の自由は保障されるべきである。若者達の知への憧憬と畏敬の念を復活させることが大切である。

齋藤会長は、企業の求める人材と題して講演した。冒頭に、現在の高学歴ワーキングプア問題に触れ、東海地方の企業は、これらに関して認識が薄いことを指摘。大学と企業間での理解が不足しているとの考えを示した。トヨタでは、1. 問題意識を持て、2. 現地現物は問題解決の基本、3. 何も変えないことは悪いことだと思え、との理念をたたき込まれる。それには、大学的な研究職というよりも、「技術職」で活躍できる人材が求められるのが現状である。学生側と企業側との意識のギャップの存在によって、これまでは上手くいっていなかった。これからはもっと歩み寄って、お互いに「食わず嫌い」を無くしていく努力が必要だろう。

名古屋大の取組で、高等研究院研究者育成特別プログラムが紹介された。これは、テニュアトラックプログラムであり、自立して高度な研究を推進できる若手研究者を育成するために、国内外で候補者を公募する。任期後には審査基準に沿って審査が行われ、合格すれば推薦部局の教員となれる仕組みである。候補者への自立研究への環境整備は、非常に手厚い印象。さらに、候補者には、大学内での各種セミナー(男女共同参画・知的財産問題など)への参加を義務づけ、教育者としての資質向上のつながるような仕組みも組み込まれている。また、公募要項はScienceにも掲載したそうである。パーマネントの研究職ポストが少ない現状はあるが、不安定なポスドクよりも、将来の見込みがあることを示すのは本人にとってもモチベーションが上がって良いのではないだろうか。

パネルディスカッションでは、人材をキーワードにディスカッションが行われた。印象に残ったのは、やや場違いな感じと本人も語っていたフジテレビ取締役鈴木氏の意見。フジテレビの就職試験には、2万人の応募がある。最近はNASAの内定をもらっていた男性や、これまでなら財務省のキャリアになるような東大のトップクラスの学生が難関をくぐり抜けて就職する。そこで、最近入社する若者の特徴として、喜怒哀楽を表に出さない、コミュニケーション能力に問題があるパターンが見受けられる。そこで、大学だけでなく、初等教育機関や家庭にもお願いしたいのは、感性の豊かな人を育てて欲しい。そして、会社としては、そういう人材が能力を発揮し働きやすい環境を作っていく努力をしていかなくてはならない。つまり、人材を送る側、受け入れる側の双方の努力が必要ということになる。
西山(財)経団連産学官連携推進部長の話では、現在日本では研究職の求人は年間7,600人、研究職の希望者が35,000人であり、25,000人以上が研究職に就けない現状を示し、経団連として検討してきた内容を紹介した。産学官連携の目的は、イノベーションにつなげることである。つまり、これには人材育成が効果的となる。価値の高い人材が、イノベーションをしてくれる人材となる。多様性がなければ、将来はないと強く主張した。

今回のシンポジウムでは、全般には、名古屋大学が現在取り組んでいる21世紀COEプログラムやグローバルCOEプログラムに関する広報的な内容だった。キーワードは人材であったが、大学の生き残りをかけていくために、人材の確保・育成が重要であるとの認識を元に、議論が進められた。

550人程度を収容する会場はほぼ満席で、大多数がスーツ姿の男性で、女性は少数であった。参加者の多くは、野依理研理事長と齋藤デンソー会長の講演が目当てであった模様。

男女共同参画室 酒井 佳美 : 記 

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