ダイバーシティ推進室 > シンポジウム・セミナー参加報告 > 第7回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
更新日:2016年1月29日
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テーマ:「持続可能社会と男女共同参画」
日時 | 2009年10月8日(水曜日)10時00分-17時30 分 |
場所 | 東京工業大学蔵前会館(TOKYO TECH FRONT)(東京都目黒区大岡山) |
主催 | 男女共同参画学協会連絡会 |
参加者 | 金指 あや子、野村 千真 |
分科会A「学協会での男女共同参画のとりくみ」
分科会B「若手研究者と異分野交流のネットワーク作り」
全体会議I特別講演「男女共同参画推進に向けた学協会連絡会の展望」
全体会議II講演会「持続可能社会に向けての女性研究者・技術者への期待」
コーディネータである日本化学会・森義仁氏(お茶大)によって、学協会全体のこれまでの活動の流れの概要と、女性研究者の人数は全体に増加傾向にあるが、一方で子どもの出産・育児を控える傾向が強まっている事など、現在の女性研究者を取り巻く情勢の特徴などについて、まず話題提供があった。続いて、日本建築学会・中川明子氏(和洋女子大)、日本獣医学会・吉岡耕作治氏(農研機構・動物衛生研)および電子情報通信学会・荒川薫氏(明治大学)によって、各学会における男女共同参画に向けた取組として、次のような報告があった。
建築学会では2008年に「基本理念」と「活動方針」を策定し、現在、これに従って活動を進めている。基本理念は、本シンポジウムのタイトルに掲げられている「持続可能社会」の構築の理念もベースに含まれている。女性の建築学会員は、戦後、着実に増加し、世界的に活躍する女性建築家も増えているが、一方で、様々な場面(教授、論文賞、コンクール等)で「女性初」の称号が付されることが未だに多くあり、今でも女性は常にパイオニアの立場に立っているのも事実である。
日本獣医学会は、昨年新規に加盟した学会であり、現在の獣医学会会員とその元となる獣医師・獣医学部の学生等の概要と学会内保育などが報告された。学会の正会員、評議会の女性割合は非常に低いが、近年の女子学生比率は約5割で推移している。また、かつては女性比率が非常に低かった大型動物を扱う産業動物医や公務員となる獣医師でも、近年は急速に女性割合が増加している。学会大会でも保育室を開設するようになった。
電子情報通信学会は会員の女性比率が2%と低い。大学でも孤立しがちな女子学生を対象とした次世代育成として、ロールモデルの提示や企業見学会を行うなどの活動を積極的に進めている。
これらの報告を踏まえ、将来的に人材不足が危惧される中、学生と会員における女性比率の格差(学生>会員)*を是正し、全体に女性の割合を高めるために、どのような活動が必要かという問題が提起され、評議会や理事、委員会などへの女性の参画を進めるための女性枠の確保の是非、意識啓発への工夫などについて討議した。男女共同参画担当委員長に女性が多い実態や、全体の階層に女性を浸透させると同時に男性の参画の必要性が指摘された。また、男女共同参画を突き詰めると、どうしても人材育成に焦点があてられる点が指摘され、共感を持って受け止められた。本分科会で、発言者に男性が多かったのが印象的であった。
(ちなみに、コーディネータ・森氏が示された各学会の学生と会員の女性比率の格差については、日本森林学会は68学会の中で格差が最大のグループに属していた。)
コーディネータの光武亜代理氏(慶應義塾大学)により第2回アンケート調査の報告と、近年のポスドク問題に関するレビューがあった。これらのなかで、物理・数学・理学などの基礎的学問の分野でポスドク問題が特に深刻であることが報告された。小柴-竹内和子氏(東京工業大学)は長年の国内外でのポスドクの経験を紹介され、日米間のポスドクの雇用形態の違いが明らかになった。北米ではポスドクやテクニシャンの募集に際して年齢制限が無く、長期にわたってポスドクを続けることが可能である。また、ポスドクには雇用保険が適用され、産休・育休中には雇用保険(給与の50%)に加え、研究所からの手当て(同30%)が支給されることが多く、ポスドクでも十分に育休を取得することが可能である、と紹介された。(独)科学技術振興機構さきがけ専任研究員の渡邉恵理子氏からは、ポスドクとしてどのような心がけをしていくかが提案された。中野亨香氏(新潟大学)からは、日本物理学会が行っている取組について紹介された。
総合討議ではポスドク問題について、雇用する側の問題点と応募する側(ポスドク・DC生)の問題点について議論された。前者に対して最初に取り上げられたことは、公募に関する不公平さの解消である。いわゆる一本釣りと呼ばれる公募はもちろん改善すべきだか、一般的な公募でもせめて落選者に不採用の理由を公表すべきである。また、公募時点でテーマだけではなく、求められる人物像(ニーズ)なども明示すべきである、という点が指摘された。また、実際にポスドクを経験した人たちからは、身分の不安定さの解消が求められた。雇用保険がかかっていないため、育休中の金銭的な負担が大きい。また、常勤職員でないため、認可保育園に子どもを預けることが不可能に近い、などの不都合が多いことが明らかになった。
応募する側(ポスドク・DC生)の問題としては、募集する側のニーズがつかみ取れていないことが指摘された。研究者になるためには業績を積み上げることが第一、と一般的に考えられているが、実際には地方大学は研究よりも教育、研究機関は専門性よりも柔軟性が求められることが多い。このように募集する側と応募する側の意識がマッチしていないことが、就職活動を混沌としたものにしている可能性が高い。
学協会として、公募の公平性・透明性などを訴えていく一方、各学会ではポスドク・学生側の意識改革を進めることが必要という認識が持たれた。
学協会連絡会の設立に貢献された小舘香椎子氏(日本女子大名誉教授・学長特別補佐)により、これまでの学協会連絡会活動と今後の展望について講演があった。
連絡会が主催した2万人規模の大規模アンケートや、その結果を踏まえての政府関係者への要望書の提出や科学技術基本計画に男女共同参画と女性研究者の活躍促進に向けた内容を盛り込むための活動など、これまでの学協会の取組とそれらが果たした役割を概観された。
学協会は設立7年目となるが、設立初期の2年間を第1期、その後の5年間を第2期、さらに、今後を次の段階としての第3期と位置づけ、活動の進展の柱として、ネットワークのグローバル化、若手女性研究者の活躍促進のための仕組み作り、さらに若手男性研究者も含めて男女共同参画への活動のリーダーの育成の必要性を挙げられた。
資生堂・岩田喜美枝氏、IHI原子力事業部・高木朋子氏、NTT環境エネルギー研究所・高橋和枝氏、三井化学・田中千穂氏により、それぞれの企業における女性研究者・技術者の活躍を支援する取組や、女性研究者・技術者として企業で働き続けるための職場の環境および職場における研究への取り組み方などについて、それぞれの経験を踏まえて講演があった。
いずれの企業も、社内風土の醸成、両立支援制度の整備、リーダーの育成などの重点課題を挙げて取り組んでいる。また、研究者として、男女に関わらず企業の研究所の中で、目的意識を高く持って活発な研究活動を進めている。
なお、資生堂では、従来の男性型の働き方(長時間勤務)の見直しに特に力を入れており、単に定時一斉退社日を設けたり、定時で消灯するような時間管理だけでは失敗の連続であったため、現在は、実際に業務の絶対量を減らすため、プロセスの改善(決済のレベルを下げる、書類を最小限とするなど)に努めているということであった。また、全体的に技術系、事務系に関わらず、会社のあらゆる階層に女性を配置するような努力がされていること、さらに技術系出身者の女性が人事部長を担当する傾向があることなどが指摘された。
未曾有といわれる経済危機の中でも、企業が女性の活躍を促進する傾向は決して衰えておらず、むしろ人材活用とそのためのワーク・ライフ・バランスの確保のための施策を積極的に進めようとしている企業が多いことが伺われた。
28学会、女性研究者支援モデル育成事業採択の22機関、および女性研究者育成システム改革加速採択5機関の計55機関の活動報告がパネルで掲示され、活発な情報交換が行われた。
なお、懇親会には文部科学省生涯学習政策局長板東久美子氏(前内閣府男女共同参画局長)が駆けつけられ、参加者との熱心な情報交換に努められた。
男女共同参画室 金指 あや子: 記
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