ダイバーシティ推進室 > シンポジウム・セミナー参加報告 > 上智大学2010年度女性研究者ロールモデリング国際シンポジウム
更新日:2016年1月29日
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テーマ:「グローバルメンターに学ぶ女性研究者キャリア」
日時 | 2011年3月9日(水曜日)14時00分-17時10分 |
場所 | 上智大学2号館17階国際会議場 |
主催 | 学校法人上智学院 |
参加者 | 川元 スミレ |
上智大学では、歴史的に「Men and Women for Others, with Others」という言葉があり、男女関わらずグローバル社会に対応できる能力を備えた人材を育成することを常に目標に設定している。平成21年度、文科省女性研究者モデル育成支援に採択された。上智大学女性研究者支援事務局「グローバル社会に対応する女性研究者支援」プロジェクトでは、卒業生の実績ある国際的なネットワークを活かし、女子学生と女性研究者に対して、「グローバル・メンター制度」を中核とした様々な支援(キャリアカウンセリング、学術成果発信支援、出産育児支援)を実施し、国際的に活躍できる女性研究者の育成を行っている。
(ホームページ参照(外部サイトへリンク) )。
平成23年3月9日に開催された女性研究者ロールモデリング国際シンポジウム「グローバルメンターに学ぶ女性研究者キャリア」では、グローバル・メンターとなっている外国の女性研究者や他機関の研究者と、オランダ、イギリス、アメリカ、日本における女性研究者の置かれている現在の状況や問題点についての意見交換が行われ、どのような方策が女性研究者の助けになるかという点に注目した講演とパネルディスカッションが行われた。今回招聘された女性研究者はすべて理科系であった。
パネルディスカッションの司会は、長年、同大学国際教養学科においてさまざまな文化的背景をもつ人々のコミュニケーションを率先され、日本と世界をつなぐ国際教養人の育成に尽力された学部長のLinda Grove教授(女性)であった。会場の質問用紙によると、「パートナーが助けたことは何か?」に大部分の関心が集まった。スペインの先生は、パートナーとはhelp (援助)ではなく、share(人生におけるすべてを共有)すべきだとのご意見であった。また、イギリスの先生は、オランダのある大学の校風であったold boy’s network (男性のみのネットワーク)の中で苦労され、かつ前夫の親族にも女性役割を担うように圧力をかけられたとのことであったが、その後イギリスで人生を共有するのに理想的なご主人に出会えたとのことであった。ここで個人的感想を述べさせていただくと、メンターとして招聘された女性研究者の現在のパートナーは、あまりにも申し分なく、世の中の実情に合わないのではないかと感じるほどであった。次に、司会のグローブ教授は、”What kind of strategy woman should take?”(女性はどのような方策を講ずるべきか)という質問を設定され、パネラーからは「基本的に男性も含むあらゆるネットワークの構築が大切である」という回答を得た。さらに、グローブ教授は、“How do you create the network?”(そのネットワークはどのように構築するのですか?)という質問を投げかけられ、「メール、国際会議などで積極的に女性研究者とネットワークを構築し共通の認識、問題点をみつけること」「女性のみでなく、この会場に多くいらっしゃるようなcompassionate(思いやりのある)な男性研究者も多くいるはずなので、男女関わらずきちんと協力し、知識を共有してネットワークを構築する努力を常時おしまないこと」という回答を得てシンポジウムの閉会時間になった。
<講演内容>(日本語訳)
1. Dr. Yoko Fttjita-Yamaguchi, Professor: Department of Applied Biochemistry,Tokai University, School of Engineering Adjunct Professor: Beckman Research Institute of the City of Hope
サイエンティストとしてのゴールは、原則として、自らの研究を進められる立場であるprincipal investigator(PI)になることである。大学院生やボスドクが研究修行中であるのに対し、アメリカでは、assistant professorからfu11 professorレベルの研究者が独立した研究者(PI)として、NIH grantsで代表される外部研究資金を得て、その研究費で研究プロジェクトの完結まで研究を進め、その結果を研究資金を出したagencyに直接報告する。PIであり続けるためには、外部研究資金を常時獲得していなければならない。大学院生やボスドクは、3.の研究室で、その指導下に研究活動をすることになる。35年前、私が大学院生であった頃の日本の大学での研究室は(旧帝国大学に端を発するいわゆる大講座制)、アメリカの研究室体制とは、大きな遣いがあった。日本の研究体制も過去20年余りで、大きな変化をしてきており、アメリカのそれと似てきた。大きな変化はボスドクの増加と(我々の時代はオーバードクターはあったが、ボスドクではなかった)、COE(Centers of Excellence)CREST(Core Research of Evolutional Science&Technology)などで代表される大醜究資金の導入である。アメリカで40年前には始まっていたequal opportunities for women 運動に相当する女性研究者支援資金も2006年から配布されるようになった。ここでは、アメリカで研究がどのようになされているのかを、日本の研究体制と比較しつつ紹介し、私自身のアメリカと日本でのキャリアパスを材料にして、女性研究者がどのようにキャリアを積んでいくべきかを考察したい。
2. Dr. Paauline Schaap Professor: Division of Cell and Developmental Biology,College of Life Sciences,University of Dundee,UK
ほとんどの先進国では、大学に進学する女性の割合に比較して、大学の研究責任者や教授のポストに占める女性科学者の割合は極端に低く、博士課程終了後の研究(ボスドク研究)における女性研究者の数は男性研究者に比べてはるかに少ない状態にある。 私は、1970年代と90年代にオランダでジュニア・リサーチャー(初級研究員)として働いた経験、そして現在英国で上級研究員として働いている経験を基に、女性が昇進してキャリアを積むことを阻むこの明らかな「見えない壁」が存在する理由をいくつかの理由に焦点を当てて述べる。次に、40代以上の女性の雇用機会の改善に貢献した世論、政策、働く女性への支援の変化について述べる。 それでも現実は理想からは程遠く、女性は男性が直面することのない昇進の壁に直面している。さらに、女性はしばしば私生活の充実か能力向上の機会の選択かどちらか一方のみ選ぶように迫られている。これにより、人類の英知や健康の向上につながり、人類の存在を脅かしている環境問題の多くを今後何年かの聞に解決することにつながるような、多くの才能が信じられないほど無駄にされている。最後に、女性がより高位の研究職ポストにつく割合を向上させるための提案を述べて講演を締めくくる。
3. Dr. Teresa Suarez Group Leader,Centro de Investigaciones Biologicas(CIB),Diety Lab,Madrid,Spain
ヨーロッパ、特にスペインにおいて女性でありながら科学者として働く上での問題について述べる。過去25年間における科学の世界の労働条件の進歩を、スペイン社会が経験した大きな社会政治的変化を踏まえて分析し発表する。大きな問題の所在を明らかにし、それがどのように変化し、改善されてきたかについて意見を述べてみたい。これまで推進されてきた戦略の実例をいくつか挙げ、その効果について議論する。また、科学における実際の女性参画に関する公的なデータを示す。スペインの科学の環境に関する未だに答えの出ていない疑問点をいくつか捏示し論じる。一般論としての大枠を述べた後で、そういった全体的な変化がいかに私自身の科学者としてのキャリアに影響を与えたか、また女性がいかにして科学の世界で地位を築くことが出来るかについて個人的な話をしたい。更に、科学という仕事には良いことがたくさんあるということを指摘したい。この仕事をしていると、ありとあらゆる場所と文化の人や機関と交流する機会があり、複数の共通の興味を共有することができる。最後に、私の知っているスペインの他の女性研究者たちはどうなのか、私たち女性がどのように私生活と仕事を結び付けているかについて少し述べる。科学の世界で働く女性が増えていることは、科学研究の在り方を確実に変化させると強く信じてる。
機能化研究室 川元スミレ : 記
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